爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「電力化亡国論」近藤邦明著

「環境問題を考える」というサイトの主宰者、近藤邦明さんが2012年に出した、核・原発事故・再生可能エネルギー買取制度などの施策が亡国につながるという意見を述べた著書です。

 

上記「環境問題を考える」で既に議論を掲載されているため、私にとっては目新しい話は少ないのですが、まとめて一冊の本として読めるのは良いかもしれません。

 

中身はやはり前年の福島原発事故に関するものが多く、決して危険が去ったわけでもないのに終息を装う国と東京電力を糾弾し、また他の原発の再稼働を狙う勢力を批判します。

 

また、原発は危険だから廃止に向かおうという人々を、「自然エネルギー発電」に呼び込もうとする勢力をも、その主張が科学的にも技術的にも根拠がなく、雰囲気だけで走り出しその中でしっかりと工業的なムダを取り込むことで自分の利益にしようという、設備メーカーや研究者たちを糾弾します。

 

その基となっている二酸化炭素温暖化説も巧妙にデータを操作して印象を作り上げてきたものであることを明らかにしていきます。

 

お決まりの文句「持続可能な社会」とは、工業製品を次々と使いながら求めることは決してできないと、考えてみれば当然ながら言われてみなければ気づかないことを明示します。

 

中で一つ、データとして出てきた事実で他ではあまり見かけなかったことがありました。

太陽電池パネルの損傷等の障害は風力発電ほどは出ていないと考えていたのですが、産業技術総合研究所が全国で調査した結果によると、住宅用の太陽光発電装置のおよそ20%が設置後10年以内にパネル損傷によって発電量が減るという故障を起こし、耐用期間と言われている17年の以前にパネル交換を余儀なくされていたそうです。

この数値から推測すると、装置の耐用年数17年の間にパネル交換が必要となるのは40%に上るということになり、太陽光発電の実質的発電原価はさらに上がり、エネルギー産出比も低くなります。

 

固定価格買取制度(FIT)も、ドイツとスペインで実施されていましたが、どちらも破綻してしまいました。

日本でも買取価格の低下が実施されており、全体としても成り立たないでしょう。

 

日本の「長期エネルギー戦略」というものは、科学的な根拠を欠くものだったためにまったく実現性の無いものとなってしまいました。

それがフクシマ事故の原因の一つであったとも言えます。

 

電力化亡国論―核・原発事故・再生可能エネルギー買収制度 (シリーズ環境問題を考える)

電力化亡国論―核・原発事故・再生可能エネルギー買収制度 (シリーズ環境問題を考える)