ネットのサイト「環境問題を考える」主宰の近藤邦明さんの著書で、おそらくこれが最初の出版の作品です。
上記サイトでは、二酸化炭素温暖化説の批判と並んで、いわゆる自然エネルギーと呼ばれる太陽光発電や風力発電の批判も精力的に為されています。
この本でもメインは「二酸化炭素地球温暖化脅威説批判」の第2章ですが、温暖化対策と言われる石油代替エネルギーというものが、何の対策にもなっていないという批判を第3章にまとめています。
第1章では、「環境問題を見る視点」として、地球環境というものはどういうものか、そして地球の定常性とそれに反して環境を崩している工業生産システムについて記述されています。
温暖化説論者などはこの辺の基本認識が間違っている場合もあるようです。
温暖化が本当に進んでいるかどうかも正確に捉えるのは難しいものですが、誰でも「なんとなく」温暖化しているように感じているでしょう。
それが温暖化説に対する疑問を生じさせない作用に効いています。
しかし、二酸化炭素濃度の上昇というものは18世紀の産業革命開始の後はずっと続いているものであり、ここ何年かの影響だけが顕著であるという理由は考えられていません。
異常気象の増加というのも、その関連性は怪しいものばかりです。
二酸化炭素が温室効果を持つのは事実ですが、それがどれほどの影響を生み出すかということは疑問ばかりです。
温室効果は水蒸気の方がはるかに強いことが知られています。
大気の温室効果の70-90%は水蒸気によると言われています。
残りの温室効果が二酸化炭素などの他のガスによるわけですが、ここで二酸化炭素が多少増えようとも温室効果全体としてはそれほど影響がないということは簡単に想像できます。
熱帯や、温帯の夏季では水蒸気が大量に大気中に存在しますので、二酸化炭素の影響は少ないのですが、寒帯や温帯の冬季は水蒸気が少ないので「放射冷却」による冷え込みが頻発します。
もしも二酸化炭素の温暖化があるようなら、温帯でも冬季の温度が緩和されて上昇しても良いようですが、それは起きていないようです。
真夏の温度上昇は温室効果のためではないようです。
太陽光発電や風力発電を推進することで、石油などの燃焼を減らし温暖化を防ぐということが言われていますが、太陽光も風力も非常に薄いエネルギーであり、それを捉えるには大規模な装置が必要となります。
この装置を作り出すのも「工業システム」であり、そこには大量のエネルギー使用と鉄やその他の金属、プラスチックなどの資源の大量使用が必要です。
それだけの資源エネルギーを費やしても元が取れるだけの効率があるかどうか。
それは、エネルギー産出比という指標で捉えることができますが、いずれも投入エネルギーが大きすぎて産出エネルギーはそれに及びません。
やるだけ無駄を作っているのがこれらの代替エネルギーでしょう。
NEDOの発表しているEPT(エネルギーペイバックタイム)という指標があります。
風力発電でEPTが1年以内となる例もあるとされていますが、本当ならばエネルギー産出比は20以上であり、他のエネルギー源と比べても非常に高いものです。
もしそうならもうすぐにでもすべてが風力発電に置き換わりそうなものですが、そうはなっていません。
おそらく、投入エネルギーの算定で「重大な積算漏れ」が有ったに違いないと書かれています。
なお、いわゆる自然エネルギーの中ではまだマシな風力発電ですが、このところ台風などで倒壊したという例が頻発しています。
どうやら、そういった自然災害に弱いというのも風力発電に付きまとう特性のようです。
バイオマスエネルギーなるものも話はでますが、そもそもかつての世界はどこもバイオマスエネルギーだけで動いていました。
その挙げ句、あちこちの森林はすべて丸裸になりました。
そもそも、人間の欲望をすべて満たせるようなバイオマスの生産性は無いようです。
今の社会を支えている[工業生産システム」というものは、あくまでも石油に頼り切ったものであるということを自覚する必要があります。
したがって、「石油の枯渇」は工業文明の終焉となるわけです。
それを延命するような代替エネルギーは存在しません。
非常にクリアな主張と感じます。
温暖化は憂うべきことだろうか―CO2地球温暖化脅威説の虚構 (シリーズ〈環境問題を考える〉 (1))
- 作者: 近藤邦明
- 出版社/メーカー: 不知火書房
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る