少子化の動きはさらに大きくなり、人口減少が現実に目に見えるほどになるということで、その危険性を声高に叫ぶ人が多くなっています。
上記記事のように、少子化が進めば「日本消滅」の危険性もあるといった論調ですが、さてどうでしょうか。
少子化が進む時の問題点として、労働人口が減ることによる諸問題、例えば経済成長が鈍化するとか、社会福祉特に年金制度の維持が不可能になるとかいったことが上げられます。
しかし、年金制度については、若年層の労働人口が年金受給世代よりはるかに多くなければ維持できないという制度自体、ほんのわずかな時期でしか成り立たなかったモデルであり、社会構造が変わればすぐに制度を変えなければならなかったのに何もできなかった無能政府の問題でしかありません。
経済の活力についても、AI化で仕事がなくなることを心配していながら、人口減の危険性を言うなど、矛盾の極みです。
目の前の現実を見れば、「少子化の危険性」というのは明らかです。
しかし、それは「現実だけしか見えない」ことなのかもしれません。
他の記事を含めて「近い将来に日本の人口は3000万人にまで減少する」と書いている記事があります。
実はここにこの問題の大きなポイントがあります。
人口3000万人というのは、実は江戸時代末期の日本の人口に他なりません。
江戸時代というのは、事実上他国からの食料輸入がなかった時代です。
つまり、「日本列島の食糧生産でまかなえる人口は3000万人」というのが真実です。
世界の人口の増加は、食糧生産量の増加とほぼ一致します。
およそ1万年前に農業生産を始めたために、人類は徐々に人口を増やしていきました。
その生産技術も徐々に向上したためにさらに人口増が進みました。
アメリカ大陸へのヨーロッパ人の侵入により、とうもろこしやジャガイモ、トマトといった作物が世界中に広まり、その生産性の高さからさらに人口増が進みます。
しかし、一番効果があったのは、「エネルギー依存農業」の開始です。
「緑の革命」というものもその一つですが、大規模な化学肥料生産、燃料駆動農業機械の利用による規模拡大、農薬の大量生産と大量使用による農業生産拡大など、すべては化石燃料をはじめとするエネルギー使用が基盤となる農業技術の拡大と生産量の大幅増です。
これらにより、食糧生産が拡大し、世界人口も急激に増大してきました。
これがいつまでも続くのなら、考え直す必要もないのですが、そんなことはありえません。
まず、農地の確保が難しくなっています。
アマゾンの熱帯雨林すら焼き畑で開発しようとしていますが、もはや他に農地となる可能性のある土地が減少しているからに他なりません。
さらに、農業用水の確保が困難になっています。
アメリカの平原などでは地下水を汲み上げての農業が主ですが、その水が枯渇しようとしています。
地球上では水が大部分とはいえ、ほとんどは塩水であり農業用に使える淡水はわずかです。
農業機械駆動用の石油なども価格が高騰しています。
これは、石油の供給に上限があるためで、これからさらに窮乏していくと考えられます。
そして、ゆくゆくは必ずやってくる「化学肥料製造用のエネルギー減少」です。
化学肥料がなくなれば堆肥などの有機肥料でなどと考えるかもしれませんが、現在の世界の農業を支えるだけの有機肥料など作れるはずもありません。
現代でも、アフリカなどの政情不安国で飢饉が起こり餓死者が出ていますが、いずれは世界的に農業生産量の減少が起きれば、経済的に弱いところから飢饉に襲われるでしょう。
そして、いずれは最強国でも食糧不足が表面化することになります。
その時には、食糧を金で買い占めたくても不可能になるかもしれません。
そうなれば、日本国内だけで生産できる農産物だけで行きていく、それがちょうど人口3000万人なのかもしれません。
まあ、事実上無理ですが。