「鬼平犯科帳」といえば池波正太郎さんが世に送り出した人気シリーズで、実在の人物であった火付盗賊改方長谷川平蔵を主人公に、その活躍を描いたもので、「オール読物」誌に連載、その後は単行本化され23巻にまとめられました。
そのシリーズについて、著者の池波さんが語った文章、登場人物全員のリスト、主要人物の紹介、さらに登場してくる江戸の街や店舗など、その世界をくまなく紹介したものです。
特に役に立ちそうなのは「用語解説マニュアル」
本編では細かい定義なしにいきなり使われてくる言葉で、ちょっとはっきりとは分からなくても何となく前後の関係から分かったような気になっていた言葉が、きちんと整理されているので参考になります。
(ただし、現代では実用にはなりそうもありませんが)
たとえば、「嘗役」(なめやく)
わくわくするような語感で、本編中でも魅力的に使われていました。
ただし、このマニュアルにも書かれているように、
「長谷川平蔵が火盗改を務めていた頃にはすでにほとんど消えてしまっていた盗賊の役割」であったそうです。
盗賊の押し込みに必要な情報を逐一しらべて「嘗帳」(なめちょう)に記し、それを高価で盗賊に売るのが嘗役の役割だという、ここまで書いてあると信じ切ってしまいますが、本当かどうかは知りません。
軍鶏鍋(しゃもなべ)
平蔵や配下の密偵たちが集う、本所の「五鉄」ですが、そのモデルとなった店もあったようです。
墨田区両国の「坊主しゃも・丸屋」という店の昔の姿がそれだとか。
しかし、小説中の姿はもちろん池波さんの創造によるものが大きいようです。
小説だけでなく、このような細々したところも魅力の一つです。