爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地理が解き明かす地球の風景」松本穂高著

私達が見る地球の風景というものは、何らかの形で「地理」というものが関与して出来上がっています。

漫然と見ていてはわからないかもしれませんが、その風景がどのような「地理」の影響を受けているか、実例を示しながら解説しています。

 

ただし、「地理」といっても色々な分野がありますので、その区分は章を分けています。

第1章は「地形」として、プレートテクトニクスや造山活動など、地質といったものを扱います。

第2章では「気候と生態系」、それも植物や動物など風景を形作るものに作用しています。

第3章ではちょっと見方を変えて「風景の見方」

 

現在では高山となっているところでも、よく見るとそこがかつては海底にあったことが分かる場合があります。

ネパールの世界最高峰のエベレスト山の写真が掲載されていますが、その頂上付近に見られる白い帯状の地層は石灰岩

これはかつて海底にあったことを示す証拠です。

ヒマラヤ付近では、押し合っているプレートがほぼ同じ重さであるために、日本付近のプレート境界のようにどちらかが沈み込んで行くということがなく、どんどんと上に盛り上がって今のような高山帯になりました。

 

日本付近はプレートが沈み込んでいる現場ですので、その線上に数多くの火山ができています。

これが日本列島特有の美しい風景を作っているのですが、そればかりでなく火山の周辺と言う場所は土壌が肥沃であるという特徴があります。

地中から噴出した火山灰は植物にとっての栄養素を多く含むため、農業に有利なのです。

また、温泉もあり風光明媚となることで観光地としても優れていて人を惹きつけます。

 

アメリカ西部の砂漠には大きな岩山がそびえ立っているところがあります。

コロラド高原のモニュメントバレーというところなど、台状の岩山が特徴的な風景を作り出しているのですが、こういった岩山は時にあっという間に消えてしまうことがあります。

日本では大雨のがけ崩れなどで山が崩れ去るということはありますが、砂漠では雨は関与しません。

これは、日夜の温度較差が非常に大きいため岩が膨張と収縮を繰り返し崩れていくということと、時々起きる砂嵐で運び去られるためだそうです。

 

「土の色」として、何を思い浮かべるか、これは地域によって違うようです。

黒っぽいものもあり、黄土色、赤土というものもあります。

元は岩石が砕かれた細かいものが土なのですが、そこに植物が生えそれが死んでいくとその分解状況によって土の色も変わってきます。

植物体が分解され腐食というものになると黒くなります。

これを多く含む土は農業に向いた肥沃な土壌と言われます。

ただし、腐食への分解が進みにくい寒冷地では植物体はそのまま溜まっていき分解されずに泥炭として残ります。

このままでは農業には不向きで栄養分は少ない土壌です。

逆に熱帯雨林では植物の分解が非常に速く進むため、腐食は分解され流されてしまい赤っぽい土となります。

これをラトソルと呼ぶのですが、これも農業には不向きです。

乾燥帯では植物があまり生えませんので、岩石の風化した砂のみがのこります。

 

地理ファンには見て楽しめる本でした。

 

地理が解き明かす地球の風景

地理が解き明かす地球の風景