爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本語人の脳」角田忠信著

人間の脳は左右で機能が違い、日本人は母音を左脳で聞くが日本人以外は右脳で聞くという話は聞いたことがありました。

この本の著者の角田さんが、その理論を見つけ出し発表したのだそうです。

 

角田さんは耳鼻咽喉科が専門の医学研究者であり、補聴器などを担当したそうですが、1963年にアメリカに留学したときに偶然、脳の左右の機能の差を研究していたDr.Kimuraに出会い、その研究をヒントに自ら研究方法を探り、外からの音に左右どちらの脳が優先して反応するかということを調べるようになりました。

 

最初は日本人ばかりを測定していたために、母音に対しては左脳優位、純音やホワイトノイズには右脳が優位という結果を出しました。

ところが、外国人を対象として実験をすると、母音は右脳優位になるということが分かりました。

日本人は日本語という、母音だけでも言語音として使われる言葉を使うためにそうなったのだろうとして、1966年に発表しました。

 

ところが、このような民族と精神構造などが差があるという議論は、とくに欧米では激しく反発され、日本人優越論ではないかと批判されたそうです。

 

しかし、日本国内では特に文学者や作家などから非常に好意的に迎えられ、安部公房武満徹大岡信らの人々に称賛されたそうです。

そして、1980年には安部公房の推薦で新潮社から日本文学大賞を受けたとか。

角田さん自身はあくまでも科学的な知見を得てそれを発表しただけと思っていましたので戸惑うことが多かったようです。

 

その後も、この実験手法を用いて様々な科学的現象の解明を続けてきました。

本書出版時の2016年に、角田さんも90歳を迎えられ、これまでの研究の業績をまとめるということを思い立たれたそうです。

 

脳の左右の切り替え、スイッチ機構というものが存在するというのが主張の一つであり、それをこのツノダテストと呼ばれる方式で左右いずれの脳の反応が優先するかということを見ているのですが、様々なスイッチで入れ替わるようです。

それでも、日本語環境で6歳から9歳くらいまでを育った人(日本人だけに限らない)においては母音が左脳ということは広く存在するということです。

 

さらには、地震の振動や太陽系の周期とも連動するというところまで進んでしまいますが、ここまで行くとちょっとどうかと感じられます。

 

私も若い頃にこの話を聞き、日本人の脳の働きは少し違うのかもと感じたことを思い出しました。

その後も、右脳がどうの左脳がどうのといったことを時たま聞いたようですが、こういった背景のあった話だと初めて知ることができました。

 

ただし、「日本語」から出発しているはずなのに、そちら側からの解析があまり無いように感じていましたが、それもお医者さんが始めたことだからだったのでしょうか。