最近はパソコンなどで作ってプリントというのが多くなり、汚い字で困るということは少なくなったようですが、かつては上手に字が書けないというのは大きなコンプレックスでした。
しかし、この本の著者の井原さんは、そのような字「くせ字」が大好きという変わった方で、いろいろなタイプの「くせ字」を見つけるとコレクションしたくなるそうです。
その蒐集品の中から、よりすぐりの「くせ字」を本にしてしまいました。
「くせ字」もよく見れば味のあるものもあります。
しかし、思えば手書きの文字というものは多かれ少なかれ「くせ」があるのが当たり前、ですが、その「くせ」というものがどこから来るのか、どういったものか、並べてみればまた発見するものもありそうです。
紹介されている字には、結構有名な人のものもあります。(書いた本人の承諾は取ってあるのでしょうか)
まったく有名でない人のものも多いようです。
看護師の卵、スウェーデン人、ある新聞記者、レコード屋店員等々
丸文字や長体ヘタウマ文字など、一世風靡したものもあります。
会社のそばの喫茶店「花」のメニューに書かれていた文字というものも紹介されていますが、汚い字ではなくどちらかと言えばきれいな字ですが、やはり非常に味のある文字です。
聞いてみたら、店主の男性が書いていたとか。
女性が書いていると思っていた井原さんは驚いたそうです。
「くせ字」というよりは「汚い字」というのが、「脳からはみ出し系」とされているものです。
これは、字を書くよりも頭の回転が速すぎて手がついてこれないというタイプのものです。
医者や学者などに多いと書いてありました。
実は、これは昔から自分の字を考える時に思っていたとおりのことです。
書きたいことが山ほどあるのに、字を書く手が動かない。
結局、かなり省いて殴り書きといったものになり、他の人には絶対に読めないものでした。
やっぱりそうだったんだ。
手書き文字で日本国民に一番愛されていた文字「映画字幕の字」だそうです。
今では活字があり手書きのものは見られないそうですが。
画数はカットし、一箇所は必ず切れ目を入れるといった特徴があり、皆似たような文字を書いていたそうですが、やはり若干は人による特徴もあったそうです。
泣ける話もあります。
著者のおばあさんは生前にたくさんの手紙を娘(著者の母上)に送ってきたそうですが、ほとんどひらがなの特徴ある筆跡だったそうです。
おばあさんの死後、さすがデザイナーの井原さんはその筆跡を真似て字を書いたそうですが、母上は「あら?おばあちゃんの字じゃない」と驚き涙ぐんだそうです。
あまりきれいな字ではないからこそ、思い出があるのでしょう。
またまた、珍品の本を読んでしまった。