地震の多発とともに、このところ火山爆発もあちこちで発生し、不安感が増していきます。
本書副題は「必ず起きる富士山大噴火と超巨大噴火」どちらも、いずれは「必ず起きる」のは間違い無さそうですが、あと数年、数十年の間に起きるかもしれないと言われるのと、数千年の間には起きますと言われるのでは、その受け取り方は全く違います。
火山学者の巽さんがそのところを解説しています。
かつては「休火山・死火山」という言葉がありましたが、その後の研究の進展と実際に休火山とされていた火山でいきなりの爆発ということもあり、もう使われなくなりました。
国際的には1万年以内に噴火した火山を「活火山」と呼ぶのが主流ですが、火山の寿命はある程度以上の大きさの場合で少なくとも100万年はあるようです。
これを「待機火山」と呼び、警戒すべきというのが著者の主張です。
地震の予知はもはや不可能と考えられていますが、火山はマグマの上昇に伴い火山性地震が起きたり、火山の山体の変化が起きるのでそれを計測していれば予知できるという漠然とした思いがあるようです。
2000年の北海道有珠山の噴火の場合は、日時までほぼ正確に予測できました。
しかし、火山の性質というものは、非常に個性が強く、一つの火山で成り立つことも別の火山ではまったく成り立たないことが多く、どの火山でもこういった予知ができるとは言えないようです。
火山の災害では、噴火の恐ろしさもさることながら、「山体崩壊」という現象が非常に危険です。
マグマの上昇に伴う噴火でなくても、水蒸気噴火や地震などを契機として火山自体が崩壊し「岩屑なだれ」というものを引き起こすことは頻繁に起きており、1888年の磐梯山の崩壊や、1980年のアメリカのセントヘレンズ山の崩壊は大きなものでした。
富士山も、その構造が何層にも分かれるという複雑なもののため、何らかの引き金があれば山体崩壊をする危険性があるそうです。
その規模と方向によって被害の大きさも違ってきますが、昔の山体崩壊の事例から考えると土砂崩れの先端は横浜あたりまで届くこともありえるとか。
富士山の噴火は東京などには大きな被害を及ぼす可能性がありますが、日本列島全体に被害を引き起こす(というか、日本全体が滅亡する)のはやはり「巨大カルデラ噴火」です。
原発運転にまつわる訴訟で取り上げられたこともあるためご存知の方もあるでしょうが、阿蘇山などが有名な「カルデラ火山」というのは、カルデラ噴火が起きた跡なのです。
もしも、これまでに知られているような規模のカルデラ噴火が阿蘇で起きるとすると、九州全土は火砕流で全滅、中国四国から近畿地方までは50cm以上の火山灰が積もってほぼ全滅、中部から関東までは20cmの降灰で、ほぼ確実に「日本喪失」となるでしょう。
しかし、このような大きな災害への対策というものはまったく考えられておらず、伊方原発の再稼働に反対する訴訟が起こされた時に巨大カルデラ噴火もその理由として取り上げられたので、本書著者の巽さんもそれに対する国の対応を期待したのですが、裁判所の判断は完全に門前払い。
少なくともカルデラ噴火はありえるということを認識してもらいたいという巽さんの願いは裏切られました。
日本の火山の出来方には、プレートの移動と海水の巻き込みが関係していますが、東日本に沈み込むプレートと九州から南西諸島にかけてのプレートは古いために重くなっており、沈み込みの速度が早く水の巻き込みも多いために、東日本と九州に火山が多い理由となっています。
しかし、関西から中国地方に沈み込むフィリピン海プレートは地球上で最も若いプレートであり、沈み込み速度も遅いためにプレートから地下に絞り出される水分量が少なくなり、そのために中国四国地方に火山が少ないのだそうです。
そして、この「絞り出される水分」が地上にしみ出してくるのが、有馬温泉のような「非火山性温泉」となっているのだそうです。
カルデラの陥没が残り、その周囲に外輪山と呼ばれる山が取り囲む風景はよく見られ、阿蘇の外輪山など絶景と言えるものですが、よく言われるのがこの外輪山の傾斜をそのまま伸ばしたような巨大火山が存在し、それが陥没したのではと考える人もいるようです。
しかし、そういうことはなく、いくつかの小さな火山の間を火砕流が埋め尽くしたためにほぼ同じ高さで連なっているというのが、外輪山の成因だそうです。
自分の寿命があと何年あるのか分かりませんが、その間にもう一度の大地震には遭遇しそうですが、巨大噴火を見ることができるかどうか、ちょっと分かりませんが、少し見てみたい気もあります。
火山大国日本 この国は生き残れるか ―必ず起きる富士山噴火と超巨大噴火
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