爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ウィキリークスの時代」グレッグ・ミッチェル著

数多くの政府機密文書を公開し、大きな波紋を引き起こした「ウィキリークス」ですが、つい先日もその創始者であるジュリアン・アサンジが長らく匿われていたイギリスのエクアドル大使館を追い出されて警察に逮捕されたというニュースが飛び込んできました。

ウィキリークスというものの活動はほとんど忘れかけられていましたが、久しぶりに動きがあったようです。

 

本書は、そのウィキリークスが全世界に混乱を引き起こしていた当時、2011年にジャーナリストのミッチェルさんが著したものです。

 

アサンジがアメリカ軍の現役担当者などから情報を引き出し、イラクアフガニスタンで多くの民間人殺害や誤爆の証拠を握り、それを公開してしまったということが最初に描かれています。

アサンジに情報を漏洩したブラッドリー・マニングという兵士も捕らえられ勾留されていると書かれていますが、その後の情報については書かれていません。

 

これらの問題について、アメリカを初めとして多くの人々から激しい非難が湧き上がりました。

この公開により、アフガニスタンなどのアメリカ軍協力者が生命の危機にさらされるという批判も起きています。

ただし、その後実際にそういった事件が起きたかどうかは疑わしいようです。

確かに表面的にはアサンジの行為は秘密漏洩で国に損害を与えると言えるので、それを傘にきた非難が多かったのですが、実際は秘密にしておかなければならないほどに国や軍隊の腐敗がひどすぎたという性格が強いようです。

 

軍隊などの機密情報漏洩に続き、アメリカの大使館の公電の暴露ということが行われます。

これについては、アメリカだけでなく対象国の批判も拡大し、それを止めようという動きも強まりました。

アサンジの性的行為を立件し逮捕しようという動きも出てきました。

そのため、彼は各地を逃亡し身を隠すということになっていきます。

 

大使館公電の相手先としては、日本も多いためどのようなものが出てくるかということは日本だけでなく各国も注目しました。

しかし、いつまでたっても中々出てきません。

実は、ウィキリークスとしてポンと出すわけでなく、各国のメディアが協力し、「メディア・パートナー」として情報の整理等をしてから発表するのですが、日本の場合はそれをしようというメディアが現れなかったようです。

かなり時間が経過してからようやく朝日新聞が名乗りを上げ、公表することになるのですが、その発表数は総数の中のごくわずかにとどまり、当時の民主党政権をおずおずと批判するだけのものだったようです。

 

このような、日本のメディアの怠慢はしっかりと記憶すべきものでしょう。

これには目をつぶったメディアは、その後の民主党政権総攻撃には積極的に参加しようとしました。

 

アサンジは、世界中の人々が政府が隠している情報に触れることができれば戦争は減らせると語り、それを信じて情報公開をしていたということです。

彼の行動は大きな影響を見せましたが、それで大国の政府が変わったとは言えないし、状況は良くはなっていないのでしょう。

まだ、問題は終わっていないようです。

 

ウィキリークスの時代

ウィキリークスの時代