行動経済学ということについては、以前も何冊か本を読んだことがあります。
経済学の分野の中では新しく生まれたもので、経済学というよりは心理学といった要素が強いように感じました。
とはいえ、役に立つという意味では従来の経済学というものよりはよほどマシなようにも思います。
この本は、経済学者の佐藤さん、菅さんが原案を作り、それを高橋さんがマンガ化したというもので、行動経済学の諸原理を分かりやすく捉えることができるように工夫されています。
行動経済学も、経済学の中では科学的かつ具体的なものを扱っていると思いますが、それでもその原理の数々は言葉にしてみると硬すぎて分かりにくく見えます。
アンダーマイニング効果、感応度低減性、フレーミング効果、アンカリング効果などと言われても、その具体的イメージは普通の人はとても行き着かないと感じるでしょう。
しかし、マンガで「5000円のドライヤーが300円引きになると買いたくなるが、195000円のオーディオが194700円になっても関係ない」ということを見せられると、「感応度低減性」が実感として分かるということです。
「社会を動かしているのはモラルか金か」というテーマでは、保育園のお迎えに遅れるお母さんの話を取り上げています。
仕事をしているお母さんたちは、どうしても子供のお迎えに遅れがちになりますが、普通の状態では、お母さん本人も遅れることに罪悪感を持ち、必死で駆け込んでくるのですが、これでは困るとして一回遅れると数百円の罰金を取ることにしたら、かえって堂々と遅れてくるようになってしまうということをマンガで表現しています。
こういったところも行動経済学が実感と密接に関わると感じられるところです。
医薬品関連で、「プラセボ効果」というものがあり、「偽薬」と訳されるもので、本当の薬でなくても医者がくれたものを飲むと効いてしまうということがあるのですが、経済分野でもこういった事例は知られているそうです。
その章末に、「プラセボ製薬」という会社が実際にできていて、主に老人用に糖を製剤化しただけのプラセボ薬を販売しているとあり、こんなエイプリルフールのネタだろうと思いましたが、どうやら実際にそういった会社があるようです。
驚いた。
前にも感じましたが、経済学の諸分野の中では唯一役に立ちそうなのが行動経済学というものだと思います。
覚えておいて損はないかも。