爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

西尾道徳さんの「環境保全型農業レポート」より、「世界人口の半分は化学肥料窒素で養われている」

日本では有機農業というと「安全安心」ばかりが言われる傾向が強いのですが、欧米では環境保全の観点から有機農業を推進する方向に向けられるという、本来の有機農業の意図に沿ったことが言われているようです。

 

ただし、それが強調されるあまり、有機農業にすべて転換しても生産量は十分であるという主張も見られるとか。

それに対し、土壌微生物学者の西尾道徳さんが、自身のブログ「環境保全型農業レポート」で有機農業の生産力が実はどの程度かということを解説しています。

lib.ruralnet.or.jp

記事中にも触れていますが、有機農業推進派の中には有機農業でも慣行栽培(化学肥料や農薬を使う農業)より数倍多い収量を得ることができるので、生産力は十分だと主張する人もいるようです。

www.cambridge.org

ただし、西尾さんも書かれているように、この論文については使われている数字が都合の良いものばかりを選んで載せている疑いが強いとして、ほとんど認められていないようです。

 

アンモニア合成法にハーバーボッシュ法というものがあり、高温高圧環境下において触媒作用により窒素ガスと水素ガスから直接アンモニアを作り出すという方法なのですが、それが特許をとったのが1908年、工場で操業開始したのが1913年と、100年ちょっと前のことでした。

そして、それ以降急激に農業生産量が増加し、それに伴い地球の人口も増加していきました。

もしもこの方法による窒素肥料生産が無かったとしたら、2008年の世界人口は32億人と推計されるということで、現在の地球の人口の半分に過ぎません。

つまり、現在の人口の半分以上は化学肥料で養われているということが言えるということです。

 

記事の最後に書かれているように、窒素肥料の投与で生産量は上がったとは言え、その副作用は数多く、様々な問題が発生しています。

そういった点は解決していかなければならないのですが、化学肥料の使用制限と有機農業への転換というのは、解決法とはならないようです。