爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「孫の力 誰もしたことのない観察の記録」島泰三著

著者はサルの観察を長年続けてきた霊長類研究者ということです。

まだ現役で研究を続けていますが、そんな中、娘さんに子供が生まれて初孫を持つことができました。

 

サルの社会の観察をずっと続けてきており、サルの子供の誕生から成長といったものも様々な種類で経験していますが、人間の子供というものを見ていくということは非常に興味深いものだったようです。

そこには、他のサルの子供の成長と同じような部分もあり、また人間ならではの部分もあったようです。

 

孫娘の「あいちゃん」の誕生直後から記述は始まり、その後保育園の生活を経て小学校入学直前までの6年間の成長を細かく記述されています。

母親が仕事をしていたために、あいちゃんは1歳から保育園に預けられ、また同居はしていなかったようですがすぐ近所に暮らしていたために祖父母にもかなり長い時間育てられてきたようで、そこでの観察も細かく大量にされています。

 

生まれてすぐの乳児の頃にはサルの赤ちゃんとも共通することが多いようですが、さすがに小学校入学前の頃には大人の感覚を感じさせるような行動や仕草も出てくるようです。

 

著者は孫の世話をすると、自分が自分の祖母にしてもらった世話を感じるそうです。

人間は他の動物とは異なり、乳幼児の世話を祖父母がするという特異性をもち、それが人間社会の進歩の一因とも言えるそうです。

その話にも親近感を覚えました。

 

保育園では、祖父母が保育状況を見学できるイベントもあるそうです。

そこを見ていて、子供たちがそれぞれ興味をひかれる遊びを思い思いにやっている平和としか言いようのない状況を見て、著者はかつて観察したニホンザルの群れの様子を思います。

ニホンザルでもすでに数家族が集まった集団があり、その中でほぼ同時期に生まれた赤ん坊ザルが集まって遊ぶ状況があるそうです。

 

著者は今でもマダガスカル島へサルの観察のために出張することがあるそうですが、孫娘にとっては祖父が居ない数ヶ月というのは寂しいようです。

帰ってくると駆け寄ってきて「もう行かないで」とささやくとか。

うらやましいものです。

 

孫の力―誰もしたことのない観察の記録 (中公新書)

孫の力―誰もしたことのない観察の記録 (中公新書)

 

 私にも孫が居ますので、実によく分かる話でした。