戦略というものについての名著といえば、孫子が有名で、軍事の戦略は経済活動にも参考になるということで、読まれる機会も多いものです。
また、イタリアルネサンスの政治家思想家のマキアヴェリの「君主論」も広く読まれているのも同じような理由からでしょうか。
本書は、その古典に加え、より軍事に偏った内容といえる、クラウゼヴィッツから、さらに時代が下って現代までの戦略論について解説されています。
取り上げられているのは上記3冊のほかに、マハン「海上権力史論」、毛沢東「遊撃戦論」、石原莞爾「戦争史大観」、リデルハート「戦略論」、ルトワック「戦略」、クレフェルト「戦争の変遷」、グレイ「現代の戦略」、ノックス&マーレ―「軍事革命とRMAの戦略史」、ドールマン「アストロポリティーク」までの計12冊です。
内容は、著者の略歴から論旨の簡単な紹介、そして最後には中でも一番の決め文句が選ばれており、コンパクトに概要をつかめるようになっています。
まあ、こういった本の原著を読んでいくというのは大変なことでしょうから、この本の存在価値もまあまああるのでしょう。
孫子の項では、最後の名文句紹介でもちろんあの文章が載っています。
「彼を知り己を知らば百戦して危うからず」
「その疾きこと風のごとく、その徐かなること林のごとく」
古くから多くの人に読まれていたことが分かります。
19世紀初頭のプロイセンの軍人であったクラウゼビッツは、ナポレオンによる戦争観の大きな変換の時代にそれを考察した「戦争論」を書きました。
しかし、その記述があまりにもナポレオン的な「絶対戦争」に偏っていたため、本人が修正して改版することを目指したのですが、それができぬままに死去しました。
その本人の意思に反する「戦争論」を、ドイツのモルトケ参謀総長が読んでドイツ統一戦争に活用してしまったそうです。
ルトワックはアメリカの軍事戦略研究家として世界的な権威となっているそうですが、その著書の「戦略」は日本語翻訳ができていないために、日本ではあまり知られていないそうです。
しかし、その本は各国の軍事教育機関で教科書として用いられているそうで、そのために日本と各国の戦略レベルに差ができてしまうと危惧されるそうです。
いくら非戦主義であっても、こういった戦略論を知らないままではいけないのかもしれません。
戦略論の名著 - 孫子、マキアヴェリから現代まで (中公新書)
- 作者: 野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/04/24
- メディア: 新書
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