内田樹さんの「研究室」、今回の記事の「憲法と自衛隊」という文は興味深い内容を含んでいました。
内田さんは、かねてから日本はアメリカの属国同様の状況であり、その中での自衛隊というものの存在もアメリカの軍事力の補完のためであるという主張をされていますが、それにもかかわらず、自衛隊の内部での教育行事に招かれて講演をするということがあったそうです。
数回続けて呼ばれ、持論を展開したのですが、その後は官邸にバレたのか呼ばれなくなったとか。
今回は久しぶりに?自衛隊の制服組、とはいっても退官された元陸将の渡邊隆さんという方と対談をされたそうです。
その中で、渡邊さんに投げかけた質問が「憲法と自衛隊の存在に齟齬があると言われているが、そこになにか問題を感じるか」という、直球ストレートのようなものでした。
自民党中枢部をはじめとする改憲派は、この問題が日本だけの特殊な状況であり、耐え難いものであると主張しています。
しかし、内田さんによると、このような事態は別に国際的に見て珍しいとも言えないようなものであり、特にアメリカの現状は日本以上の憲法との乖離状態だということです。
アメリカ合衆国憲法には次のような条文があると解説されています。
アメリカ合衆国憲法はそもそも常備軍の存在を認めていないのである。
憲法第8条「連邦議会の立法権限」の第12項にはこうある。
「陸軍を召集(raise)し、これを維持(support)する権限。ただし、この目的のための歳出の承認は2年を超えてはならない」
第13項「海軍を準備(provide)し、これを保持(maintain)する権限」
陸軍は必要なときに召集されるべきものであって、常備軍であるべきではないというのは建国の父たちの揺るがぬ確信であった。
つまり、「常備軍」としての陸軍を保有するとは憲法の規定に書かれていない。
あくまでも「招集して維持する」とされています。
現状の、世界最強の陸軍はもちろん常備軍に間違いなく、そこに憲法との乖離があります。
そして、この規定の根底には、アメリカがイギリスの植民地としての地位から独立戦争を行って独立を勝ち取ったという歴史があるとしています。
つまり、アメリカはなによりも「抵抗権」と「革命権」を重視するのです。
国民の銃保有の根拠となっている、憲法修正第2条は、まさにこのために存在しているとも言えます。
そして、その抵抗や革命を常に潰すために使われるのが常備軍というものであるので、それを持たないということを憲法に規定しているのだということです。
さらに、第2次大戦後の日本に憲法をもたせる時も、GHQはこれを意識して日本国憲法を作らせた。
したがって、そこには「常備軍を持たない」規定を設けるが、それは日本国民が自衛のために自ら武装するという、まるでアメリカのような状態を夢想していたという解釈です。
しかし、日本人はまったくそういう方向には行かずにただ武装だけは投げ出すということになってしまったのだと。
元自衛隊陸将の渡邊さんとの対談で、このような話を内田さんは持ち出したのですが、それに対し渡邊さんも「深く頷き、さらに”第二次大戦まではできるだけ常備軍を持たないということを守ってきたが、この50年で変わった”という発言をされた」ということです。
いろいろと、知らないことを教えてもらいました。