爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「人間と遺伝子の本当の話 ウソばっかり!」竹内久美子著

竹内さんは大学院で動物行動学を勉強したものの、研究者の道を歩まずに著述家として活躍されており、「そんなバカな!遺伝子と神について」(1991年)はベストセラーとなりました。

 

この本も内容はそれと同じようなもので、人間の行動というものが遺伝子が自らを増殖させようとする働きによって動かされているということを、身近な事例をあげて説明するものです。

まあ、一般読者向けということでかなり卑近な例も使われており、真面目な研究者からは白い目で見られそうですが。

 

本のはじめから、「なぜイケメンがもてるか、美女も同様」といった調子です。

実は、「容貌、外観がよい」というのは健康状態が良く遺伝的に優れていることを示していて、これを配偶者に選ぶことで自分の子供が良い性質を得られるからだということです。

 

これはその判断基準の裏にも理由があり、そのように優れた性質の人の容貌を「美しい」と感じるように人間の美醜の感覚の方が近づいているということのようです。

 

また、「娘が自分の父親に似た人に惹かれる」というのも生物的な理由があり、多くの人の好悪の基準を研究した事例によれば、自分に似た部分を持つ人を好ましいと感じることが多いそうです。

これは人間だけでなく動物でも同じような傾向が見られ、鳥のウズラを用いた実験でもイトコに当たる鳥を一番好むと言う結果が得られたそうです。

 

ただし、思春期になった娘が父親を嫌うというのにも生物学的な理由があり、免疫の型の一種であるHLAが共通であると、その結果生まれる体臭も共通したものが発生し、それが生理的に受け付けられないからだということです。

当然ながら、父親は免疫型は共通の部分を多く含むためにダメなのだとか。

もしも、幼児期の頃のように「お父さん大好き」が続いてしまうと、最悪の場合近親交配の危険性も高くなるために、それを防ぐという意味があるそうです。

したがって、世のお父さんに対し著者からの言葉は、「娘が自分を嫌うのは実の子だからで、もしも嫌わなかったらそれが怪しい」からだとか。

 

 

付き合って間もないカップルが暗闇に行きたがるのも心理学上の理由があるそうです。

これを「暗闇効果」と呼び、夜や暗い場所というのは人は心の垣根を低くしやすいということです。

吊橋の上など不安定なところで、一緒に歩くと思わず腕を組みたくなるのですが、これも「吊り橋効果」と言って心理的な理由です。

恋愛というのは、吊り橋効果や暗闇効果といった手段をうまく使えば進みやすいものですが、そもそも恋愛は勘違いなしでは成り立たないもののようです。

 

孫は子供よりかわいいと言いますが、それでもどの孫も平等にかわいいわけではなさそうです。

孫といっても、「息子の息子」「息子の娘」「娘の息子」「娘の娘」といった種類があるのですが、人間の遺伝子の場合は性染色体のところで性別の差が大きく、Y染色体は父親から、X染色体は両親からもらうために意味が違ってきます。

父方の祖母から見た場合、孫が女だったらX染色体の50%を受け継がせますが、男の場合は0%です。

母方の祖母から見ると、孫は男女に関わりなくX染色体の25%を受け継がせます。

 

これが祖母の行動に現れており、父方祖母は孫息子に冷たく孫娘を可愛がる。母方祖母は孫の性別に関わりなく可愛がるということです。

 

ABO式の血液型が性格に影響を与えているというのはほぼ否定されているのですが、この血液型というのは免疫の型であり、病気に対する免疫力は確かに違うようです。

そのため、病気にかかりやすい血液型というのはあるらしく、A型はガンをはじめ心臓病や糖尿病にもかかりやるいのだとか。

病気に対して強いのはO型で、たいていの病気の罹患率は他の血液型より有意に低いようです。

ただし、唯一高いのは梅毒などの性病だそうです。

 

まあ、本当かどうか分からない話ばかりですが、面白い読み物です。

 

ウソばっかり!  - 人間と遺伝子の本当の話 -

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