爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「鬼がつくった国・日本」小松和彦、内藤正敏著

鬼という言葉は、乱暴者、悪者という意味でも使われますが、ここでは歴史の上で使われてきた、朝廷や幕府といった政府に敗れて辺境や域外へ追われた者や、主産業であった農業に従事することは許されずに差別され賤業につかされてきた人たち、(芸能も含まれる)などを指します。

 

社会の中枢部からは差別されたものの、実際には日本という国を作る大きな力を持っていたとも考えられるということです。

 

そういった、周辺部の文化とも言うべきものを、民俗学者の小松さんと写真家の内藤さんが対談しながら描いていきます。

この本の出版の1985年当時は、内藤さんも民俗文化専門の写真家ということでしたが、その後は大学での教鞭も取るようになったようです。

 

長らく都であった京都は、天皇が住み朝廷が置かれましたが、そういった「光」の部分と同時に「闇」の部分も備えていました。

あちこちに魔界と呼ばれる空間があり、陰陽師なども活躍したと言われています。

そのような闇の世界には、権力闘争で破れた人々が落ちていきました。

貴族たちが怨霊を恐れていたということはよく知られています。

 

「まつろわぬ者」も鬼と言われるのですが、東北地方は最後まで大和政権に反抗し、制圧後も隙きがあればと狙っているかのように思われていました。

また、修験道というものも、信仰を集めながらも各地を転々として政権の支配を受けているとも言えない状況でした。

役小角もそういった反逆者としての顔も持つものでした。

 

江戸時代にはそのような闇の世界もかなり小さくなってしまったようです。

しかし、幕末になるとまたぞろぞろと這い出してきたと言えるようです。

現代でもなにかあると顔を出す、そういったものかもしれません。

 

鬼がつくった国・日本―歴史を動かしてきた「闇」の力とは (光文社文庫―NONFICTION)