内田樹さんが、某学者の会のニューズレターに依頼されて書いた文章ですが、ほとんどひと目に触れないところなので、もったいないと感じて再録したそうです。
現代の若者を評した文章です。
世代論というものがあり、「全共闘世代」であるとか「新人類」といった言葉で表そうとしていますが、内田さんもそういう分け方はあまり好みではないそうです。
しかし、ある新聞の取材で現代の若者は一言で言えばと問われて思わず「空虚感を抱えたイエスマン」と答え、それがまさに当を得た言葉であることに自分でも驚いたとか。
イエスマンという人々はいつの時代でもある程度は存在してきましたし、一定の社会的地位は得るものの、決してトップにはなれず(もしなってしまったら組織が大変なことになる)心ある人々からは糾弾され馬鹿にされるということになるそうですが、実は現代はそういった人々が多数を占めるようになってしまったとか。
ただし、そこには「空虚感を抱えた」という形容がつくというところが内田さんの鋭い感覚です。
世の中がおかしいということは誰もが気づきながら、そこに向かって声を上げ批判を続けるのは、無駄に見えてあまりスマートではなく、賢くもなさそうだ。
ということで、斜に構えておかしいということは心の中にしまい込みイエスマンに徹する。
それがその形容につながるのでしょう。
原発が時代遅れのテクノロジーだとは熟知しているが「それ以外に何か経済合理性にかなう代案があるとも思えぬ」と苦笑し、日銀による官製相場が毒性の強い政策だと知りつつも「国民の税金をオレの個人口座に付け替えてくれるなら安倍=黒田体制にはできるだけ長く続いて欲しい」と嘯く。この世界がろくでもないものであることをオレはよく知っているし、オレは誰よりこの世界を嫌っているけれども、それはこの腐った世界のシンプルな仕組みから自己利益を引き出すことを止める理由にはならない。
こういった姿勢が現代の若者をよく表しているということなのでしょう。
そしてなんと、トランプ大統領もこの典型だそうです。
これはちょっとすぐには理解できませんが。
最近はあまり若い人たちと交流することもなくなってしまい、これが本当なのかどうか判断できる状況ではありませんが、覚えておきたいものです。