中国で、HIVウイルスに感染した父親の子供???の受精卵にゲノム編集を施し、出生したというニュースが流れ、大きく扱われています。
ゲノム編集技術というものについては、私も数回ここで記事にしていました。
これまでのいわゆる「遺伝子組み換え」という技術では、外来遺伝子の導入が行われていましたが、「ゲノム編集」はそのような外来遺伝子は用いずに、本来の遺伝子の中でピンポイントで変換することにより性質を変化させることができるというものです。
したがって、すでにヒトの遺伝子の全体が解析されているからこそ可能となった技術です。
ただし、遺伝子の働きがすべて解明されていることも必須となります。
もしも、ヒトに対して応用するとなれば数々の有名な遺伝病を対象とするのではないかと思っていましたが、もちろんこれらの実施は人体実験そのものですので、まだ当分は不可能と考えられます。
したがって、今回の報道のように、「父親のHIVウイルスの感染を防ぐようなゲノム編集」なるものがどういったものか、そもそも理解もできませんし、その編集が有効であるとはとても考えられないと言えます。
だいたい、「父親がエイズ患者」であることが、母親の胎内の胎児に何の関係があるのか、「母親がエイズ患者」ならまだ分かりますが。
しかも、「母親がエイズ患者」であるとして、そのウイルスが胎児に「感染するルートを塞ぐ」ゲノム編集って、何を意味するのかさっぱり想像できません。
テレビ報道番組で専門家が指摘していたように、すでに母親がエイズ感染者であっても胎児に感染をさせないように出産まで導くということは、方法が確立されており、すでに実施されているはずです。
というように、今回の報道の実験は非人道的な人体実験であるという以前に、実験目的が無意味であり、その対象も不明確、手法も不可解といったものであり、発表者の中国人研究者の単なる売名行為としか言えないと思います。
まあ、これで少しでもゲノム編集技術というものに一般の関心も集まってくれれば良いですが。