爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「辞書のすきま すきまの言葉」清水由美著 トム・ガリー監修

日本語を英語にしようとする場合、なかなかピッタリの言葉が見つからないということがあるようです。

どうしようもないときは、「MOTTAINAI」のように日本語そのままで使う場合もあるようです。

これは、どうやら日本人と英米人の物事の捉え方、考え方、生活習慣などによるもので、単に翻訳が難しいと言っただけの問題ではないのでしょう。

 

日本語教師をしている清水さんが、そのような英語にしにくいと感じる言葉について、東大准教授で在日経験も長く、辞書の記述にも通じているガリーさんとともに訳そうとすればどうなるか、そもそもアメリカにそのような事例があるのかといったところを調べています。

英語に上手く翻訳するにはどうすればよいかといったところに留まらず、日本人の感じ方といったものを考えさせられるものになっています。

 

配偶者をなんと呼ぶか、日本人でも世代により違いが出ている問題で、かつてのように

「主人」と言う言葉を使いたくないなんていう人も居るようです。

英語であれば my wife\husband あるいは単に she/he で済む話ですが、日本語で「彼女/彼」というのはまったく違った意味を持ってしまいます。

これは、日から英への翻訳の場合はあまり問題にはならないでしょうが、逆の場合は困りそうです。

なお、保育所や小学校の子供の親同士の会話で使われている「◯◯くんのお父さん」という言い方はアメリカでは要注意とのことで、たとえばJohnnyのママが別のママに「Johnny’s dad」と言うと、それだけでJohnnyの両親は離婚しているということになるとか。

 

日本人は英語を使う場合に前置詞が苦手なことが多いようです。

たとえば、日本語の「の」に当たるものが、「of」だけでなく「for」などを使わなければならない場合が多いということです。

日本の歴史 the history of Japan

金の価値 the value of money

などはofでよいのですが、

100万円の小切手 a check for a million yen

頭痛の薬 a medicine for headaches

などはofでは間違いでforを使わなければなりません。

 

順序を表す呼び方には日本独特のものも関係してきます。

「先輩・後輩」という言葉は学校でも会社でも頻繁に使われていますが、ガリーさんによれば英語圏には「先輩・後輩」という概念そのものが無いそうです。

アメリカの会社では、入社年度が考慮されることはなく、実力だけで後から入社した人が上司ということもよくあることです。

また、学校でもそういったことが意識されることはなく、日本人が「He is my senior」などと言うことがあるのですが、英語ネイティブは聞いてもなんだか分からないそうです。

 

商品の宣伝チラシなどによく、「写真はイメージです」などと書いてあることがあります。

良く見せようとして写りが良いように操作してあるので、それを信じて買った人から「実物と違う」などというクレームが来た時の言い訳に書かれているのですが、これが英語にしたらまったく意味が通りません。

「This photograph is an image.」なんて訳しても「写真は画像です」というだけのことで、なんのこっちゃと言われそうです。

まあ、強いて訳せば「This photograph serves only as a visual reference.」とでもするのでしょうが、こんなことを書いてはいないそうです。

 

反対語と言うものは、日本語の場合でもいろいろな場合があり、常に同じ組み合わせというわけではありません。

「白」の反対はと聞かれても、「黒」の場合もあり「赤」の場合もあります。

これは、その言葉の含む意味のどの属性に対しての反対かによって組み合わせが変わるからです。

日本語では「お湯」の反対語として「水」を使う場合がありますが、英語では「お湯」に当たる一つの単語はありません。「hot water」としか言えないわけで、お湯と言う言葉もないのかと日本人が一度は驚くところです。

しかし、英語でもbull とcowを分けているのに、日本語では「牛」だけかという問題とも共通の面があります。

 

「自然」の反対は「人工」かと思ったら、「ナチュラル」の反対は「プロセス」だったというのはチーズの場合でした。

「レギュラー」の反対は「インスタント」?これはコーヒーですが、「補欠」の場合もあります。これは野球チーム。

 

英語と日本語の翻訳の話のようでしたが、日米の文化の差と言うことでした。

 

辞書のすきま、すきまの言葉 ――あんな言葉やこんな言葉、英語では何と言う?

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