こういった題名の本では、単に食品添加物を使ってあるだけでダメとか、残留農薬は何でも危険といった、ほとんど読む価値もないものが多いのですが、パラパラとページをめくってちら見をしてみたら、結構面白いことが書いてあると感じ、読んで見ることにしました。
すると、かなりまともな論旨であり、実情もよく分かっているということが垣間見えるように思いました。
著者の河岸さんは、帯広畜産大学を卒業後、養鶏場、食肉処理場から惣菜工場、スーパーの厨房衛生管理者まで、様々な職場を経験されたという方で、経歴を見ればその確かな意見も納得できるものです。
本書を貫いている確かな主張は、「消費者のために商品を作っている企業」と「儲けるためだけに商品を作っている企業」の両方が存在しており、それを見抜くことが大切だということです。
食品添加物についても、「添加物はなんでもダメ」などという実態を知らない空論ではなく、「美味しくするために不可避の食品添加物」と「儲けるために使われる添加物」があるということをはっきりと述べています。
こういったことは、なかなか一般消費者が見ただけでは分からないことが多いのですが、それもできるだけ見抜けるようにヒントを記しています。
精肉は、今ではほとんどの消費者はスーパーで購入しているでしょうが、良いスーパーと悪いスーパーははっきりと別れています。
精肉は塊肉からスライスしてすぐに売られるのが一番です。
スライスして時間が経つとドリップという肉汁が抜け出してしまいます。
しかし、この加工場をスーパーの店内に作り、担当者がスライスするとコストが上がります。
そのために、加工場を一括して別の場所に設けたり、別の業者に委託するところもあります。
このようなスーパーを見分けるには、加工場の表示を見て、さらに加工年月日が書かれているかどうかを確かめること。
このような店内加工をしているのは「ライフ」「イトーヨーカドー」「サミット」などだそうです。
食肉加工品は、加工食品ですので食品添加物や原材料を表示しなければなりません。
ここで、多くの消費者は食品添加物や原産地などを見たがりますが、実際はそれほど悪い食品添加物などありませんし、原産地も海外でもほとんど問題となりません。
それよりも簡単に判断できるのが「原材料に、大豆たんぱく、卵タンパク、乳タンパクなどを使って混ぜ物で水増ししていないか」ということです。
ハムなどは豚肉で作られていると思っているでしょうが、実は100kgの豚肉から上記の混ぜ物をして150kgのハムを作ることができるそうです。
ロースハムを作る時に、リン酸塩や発色剤、酸化防止剤はどうしても使ったほうがよくできるということがあります。
しかし、「混ぜ物をしたために使わざるを得ない食品添加物」は実はメーカーが儲けるために使われているということです。
こういったものには、増粘多糖類などがあたります。不要な混ぜものを使うための添加物であり、その使い方を見抜くことができます。
肉類だけでなく、鮮魚でも外注工場を使うスーパーが増えているそうです。
これも、売れるまでには相当な時間が経過しており、鮮度は落ちてしまいます。
ただし、見たところスーパー店内に厨房があるように見えていても、業者から刺し身の状態で仕入れて、その厨房ではパック詰めするだけというところもあります。
(それでも最終加工場はそのスーパーと表示しても嘘にはなりません)
丸々1匹の魚を「調理承ります」(三枚おろしなど)と書いてある店は大丈夫なようです。
さて、この本では良い店として推奨できると何店かの店名をあげているところがありますが(その店が著者の取引先とかいう疑いは棚上げにしておきます)
「悪い店」というのはさすがにほとんど明記していません。
しかし、一箇所だけありました。
牛丼チェーンで、客のためを思えば牛肉の味の向上が第一なのですが、そういった努力よりも店員人件費削減ばかりに努力?しているような「すき家」ははっきりと名前を挙げて批判しています。
以前、店員一人だけで営業させていた「ワンオペ」が問題となっていたのに、まだそれが続いているそうです。
とてもそのような店舗が「美味しい牛丼」を提供できるとは思えないと断罪しています。
ここの部分は、かつてちょっと業務上の関わりがあり、すき家の元締めゼンショーに苦い汁を味合わされたので、激しく共感しました。
読むまではちょっと不安もあったこの本も、著者の豊富で濃密な現場体験が内容の濃さを見せてくれて、なかなか良いものと思いました。
この本も、ちょっと題名で損をしているかな。やや品位に欠けるところがあります。