著者は明治41年生まれ、大正末期から登山を始め、昭和初期から活躍されていたという方で、60歳を越えた昭和45年(1970年)にこの本を出版されています。
昭和時代前半の頃から登山に関わる書籍は何冊も出版したそうですが、その最後にこの本を出したということで、登山全般にわたっての記述となっています。
私がこの本を買ったのも出版直後とすると高校生の頃でしょうか。山に登るのも良いかなと憧れてのことでした。
高校のクラブでも山岳部というのもありましたが、自身は別の運動部に入っていましたので、それを放っておいて山登りに行くわけにもいかず、山は本で読んで想像するだけというものでした。
昭和40年代ころまでは、若い人たちの間には登山ブームとも言える流行がありました。
大学生や社会人たちが週末や連休などに大挙して日本アルプスなどに出かけていたものだということです。
そのためということでも無いのでしょうが、本書著者の高須さんから見れば訓練も足りず、リーダーの力量も不足したパーティーがカッコだけつけて高山に出かけ遭難するという事故も目についたのでしょう。
というようなわけで、この本も中味はそういった登山初心者に登山に関するあらゆることを最初から平易に具体例を交えて解説しています。
例えば、「歩調」についても、
「早足はいけない。登山はけっしてマラソンではない。どんな平易な路でもゆっくりとあせらずに登ること。滑ったり躓いたりするのは登山家の恥辱である」
と、やや古めかしい言い方ですが強調しています。
「リーダーについて」でも、当時は学校の山岳部だけでなく、職場にも、町内にも山岳同好会があった時代ですので、そういった集団により様々なリーダーシップというものを解説しています。
町内の同好会などでは、リーダーといっても形だけの場合が多く、そのような集団の食い違いが事故や遭難につながることも多かったようです。
こういった時代に登山を愛好した人々が、今になって老人登山の大流行の立役者となっています。
初心を忘れず、無事を第一に登って欲しいものです。