爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「これが日本の民主主義」池上彰著

テレビでもよく拝見し、本も何冊も読んでいる池上さんですが、日本の民主主義というものについて、かなり厳しく指摘した本です。

 

日本は第二次世界大戦の敗戦により民主主義というものをアメリカから与えられました。

その中味を皆が理解しているとは言えないまま、次第に自己流の「民主主義」を作り上げてしまったようです。

 

戦後、アメリカは占領している日本について、「戦争ができない国にする」という方針のもと、日本国憲法を示し戦争放棄を決めさせました。

しかし、その後の国際情勢の変化でアメリカの態度も変化し、自らの傘下で軍事力を行使させようとしたのですが、逆に憲法を盾に思う通りには動かなかったのが日本政府でした。

今になって、ようやくアメリカの言う通りに動く政権を樹立させました。

安保方針等を日本に指示した文書も存在しています。

2012年に発表された「アーミテージ・ナイ・レポート」というものは、その中身は日本政府への提案と言われていますが、その後の日本の政府決定はすべてこれに沿っていることが分かります。

こういった問題について、国内で真面目な議論が行われたことはありません。

これが「日本の民主主義」であるということです。

 

日本の農政は、戦後すぐの食糧不足対応というところから始まりましたが、その後は自民党の票田とも言うべき農家に対しての補助金分配に過ぎないものになっていきます。

農産物の輸入自由化の海外からの圧力は上がり続けましたが、これに対しての貿易自由化の対策費というものはほとんどその補助金に使われました。

これも「日本の民主主義」のレベルの問題です。

 

1949年にカール・シャウプが日本の税制の問題点についての報告書をまとめました。これをシャウプ勧告と呼びます。

これによって戦前の間接税主流の税制を改革し、所得税法人税などの直接税主体の税制へと移行しました。

戦時中には戦費を賄うために多額の赤字国債を発行し、それが戦後の超インフレの原因ともなったために、財政法という法律で国債発行を禁じました。

しかし、東京オリンピックの翌年には公共事業減少から深刻な不況となったために、特例公債法という法律を作ってまで、赤字国債を発行しました。

それがオイルショック後にも「特例」で国債発行、その後も特別な事情で国債発行を続け、今ではとんでもない額の国債残高が残っています。

それを是正しようと消費税など導入を図るたびに選挙で大敗するということが繰り返されています。

税制と財政をめぐる動きを見ていると、「日本の民主主義」のレベルを改めて考えさせられます。

 

様々な面から、池上さんは「日本の民主主義」について論じています。

非常に低いレベルのものだということでしょう。

 

これが「日本の民主主義」!

これが「日本の民主主義」!