この本が出版されたのは、2010年12月。
リーマンショックでアメリカを始め全世界があっという間に不況に追い込まれた直後という時でした。
その影響が日本は少なかったのかどうかという議論もありましたが、それ以前にバブル崩壊以降の状態が続いていた日本にとって、ようやく一息付きかけていたところに重ねて痛手になりました。
そのような状況ですので、経済については専門家でも意見が様々に別れ、政権担当者やその他の政治家たちもどうして良いのか分かっていないようでした。
そこで、著者の原田さんが大和総研のスタッフとともに多くのデータを解析し、それを駆使して日本経済と世界の現況を詳しく分析したのが本書です。
ただし、経済本の宿命ですが、その後の状況が激変すると書いてあることも意味を減じるだけならまだしも、意味を失うこともよくあることです。
この本もそのような状態に陥っているようにも見えます。
何しろ、その後すぐに東日本大震災が起こり、さらに民主党政権が崩壊し自民党安倍政権が誕生しました。
まあそれは仕方のないことですので、経済本を読むときの楽しみ方「後知恵で本に書かれていることを批判する」ということに専念すれば良いというのが、読書の醍醐味です。
なにしろ、自分の金で買った本でもなく図書館で無償で借りただけの本ですから。
そんなわけで、あら捜し。
ワーキングプアは本当に増えたのかということを解析しています。
雇用の悪化が言われていましたが、それは事実だったようです。
さらに、日本の特質と言われていた貯蓄率の高さが、高齢化とともに変化して低下しているということも言われています。これはさらに激しくなっているでしょう。
「日本はそもそも平等な国ではなかった」と結論づけています。
財政赤字は当時も今も変わらず問題です。
誰が財政赤字を増やしたかということも論じています。
海部内閣では安定していたのが、宮沢、から橋本までで徐々に拡大し、小渕内閣で急拡大しました。
その後、小泉内閣から安倍福田まで安定に向かいましたが、麻生内閣で急拡大しそれが民主党内閣まで続いていました。
ただし、これは首相の性格や方針だけによるのではなく、時のめぐり合わせという要素が強いようです。
最終章、「出口の先に何があるのか」
分からないというのが正解というところでしょうか。
まあ、主流派経済論の巣窟のような大和総研の方の本ですので、その権威をまったく疑いも持たずに振りまいているような内容です。
経済成長の必要性もまったく心配していません。
そこに一番の間違いがあると思うのですが。