イタリアに住み、「ローマ人の物語」などの大作を著した塩野さんですが、それらを出版する以前に書かれた小品です。
それでも、歴史上の数々のエピソードを紹介され、その後の小説につながったものも多いのではないでしょうか。
イタリアでも諸都市の間では相当な違いがありますが、この本で取り上げられているのはヴェネツィアが多いようです。
ヴェネツィアは中世からルネサンス期まで、商業を主とした共和制の都市国家として繁栄していました。
選ばれた元首(ドージェ)のもと、統制の取れた商業活動をして地中海の世界で指導的立場を守ってきました。
ヴェネツィア共和国からは、各国に大使を派遣していたのですが、彼らが本国に報告書を提出しており、それは今でも残っています。
ヴェネツィアは商業だけが生きる道であり、大使もそれを守るために必死の活動を続けており、情報収集も非常に重要視されていたようです。
相手国政府の情報も多いのですが、その風俗についての情報も細部まで描かれており、コンスタンティノープルに派遣されていた対しのジャンフランコ・モロシーニは、そこで最近流行り始めた「CAVEE」と呼ばれる飲み物について報告しています。
これがコーヒーを初めて紹介したものらしく、モロシーニは帰国した際にカヴェの実を持ち帰り、飲用してみせました。
ヴェネツィアでも徐々に広まっていったそうですが、非常に高価なものであったようです。
著者は一時フィレンツェにも住んでいたそうで、そこで住居を探したそうですが、契約まで済ませて住もうとしても、「文化財保護委員会」というところからあれこれと注文が付き、簡単には住めなかったそうです。
少しでも手を入れようとするとその委員会からクレームが付き、改装は不可能だったとか。それも困ったものです。
塩野さんのイタリアなどの関する著作は大きな影響を持っているようで、逆にこれが歴史上の真実だと信じてしまう人も増えてきて困ると言うこともあるようです。
あくまでも小説として書かれているので、歴史上の事実とは異なるところも多いとか。
気をつけねば。