「依存症」といってもいろいろなものに対しての依存というものがあるようで、最近では「ギャンブル依存」というものが、カジノ法案審理の際に問題となりました。
この本では、「アルコール依存」を主に扱っています。
著者の信田さんは、アルコール依存症というものが治療の対象として見られるようになったごく初期から、関わってこられた方です。
医師ではなく、心理職として精神科病院に入り、しばらく治療に加わった後に、独立してカウンセラーとして開業しました。
アルコール中毒と言われて、あまり治療もされないまま精神病院に入院しているだけのような状態であったアルコール依存症患者に対し、医師や心理職の人々が取り組もうとしだしたのは、1960年代になってのことだったそうです。
とはいえ、酒の忌避剤というものはあったとは言え、依存症そのものを治療する薬剤もなく、治療方法というものも無い中で、断酒と言うことをやっていくということは、医師だけでできることではなく、その他のスタッフや患者の家族なども巻き込んでもものとしていかなければならないものでした。
精神科医療の世界では「コメディカルスタッフ」という言葉がよく使われており、看護師や薬剤師は別として、ソーシャルワーカー、心理療法士、作業療法士といった人々が診療に関わっています。
その中で、「心理職」と言う人々はまだ国家資格となっていないそうです。
しかし、患者自らの意志として断酒会に参加してアルコール依存から脱却するためには医師だけでは不可能といえるもので、多くの人々が支える必要がありそうです。
アルコール依存症というものに長く関わってきた著者が、それを取り巻く多くのものについて書いたという、重い内容の本ですが、著者がその仕事を始めた40年前と比べて現在は状況が改善されているのでしょうか。
まだまだのようにも見えます。