乳酸菌の話といってまず思い浮かぶのは「健康効果」でしょう。
昔から整腸作用があると言われていますし、最近ではいろいろな研究が進み、免疫力増強効果があるとか、内臓脂肪を減らすとか、甚だしいのは制ガン効果があるといった話まであります。
昔からの乳製品メーカーだけでなく、一般食品メーカーや製薬メーカーなどでも研究を進めているようです。
また、乳酸菌も菌種や菌株によっても差が大きいと言ったことも言われていますし、本当のところはどうなんだという思いも持たれても仕方ない状況でしょうか。
実は乳酸菌の健康効果といってもまだ確固とした証拠があるわけでは無いようです。
引用した記事の中に出ている、欧米の研究機関による実証試験でも乳酸菌の腸炎予防効果、風邪に対する免疫力増強のいずれにもはっきりとした有効性は証明されていません。
しかし、これは私も実験担当の研究者から直接聞いたことですが、in vivoの細胞試験などでは乳酸菌の様々な有効性が見られるそうです。
それが実際に人体で証明されるまでには至っていないにしても、いずれは何らかの有効性が証明されるかもしれません。
なお、こういった機能性は必ずしも「乳酸菌」であることと関係はないように思います。
「乳酸菌であること」というのは「乳酸発酵で乳酸を作り出すこと」ということですが、様々な健康効果を示す機能性というのはそれとは関係なかろうということです。
つまり、乳酸菌でも菌種、菌株によってその効果はまったく異なるであろうということが推論できます。
「乳酸菌だから良い」とは言えないようにも思います。
最近の健康食品のCMでは、「乳酸菌も含まれる青汁」といったものが多数流れています。
その数も、1杯に乳酸菌100億個なんていうものもあり、すごいなと驚く方も多いでしょうがそれはどの程度のものでしょうか。
ヨーグルトは乳酸菌にとってはかなり良い条件で、その菌数も多いと思います。
それによれば、法令で決まっている最小数が、ヨーグルト100ml中に10億個以上となっており、実際には多くのヨーグルトはその10倍以上の乳酸菌が入っているそうです。
しかし、上記のCMが真実であるなら、青汁1杯分の中にヨーグルト100mlに含まれるのと同じくらいの乳酸菌が入っていることになります。
ヨーグルトは乳酸菌を生育させながらその味や香りを作り出していますが、まさか青汁でそのような乳酸菌培養ができるわけはありません。
これは、実は専門の培養会社があり、そこがタンク培養で大量の乳酸菌を作り出しているようです。
ネット情報で検索したら、受託して培養する会社のCMが載っていました。
もちろん、この会社が青汁用の乳酸菌を培養しているとは限りませんが、同じような会社がいくつもあるでしょうから、どこかの会社が受託している可能性が高いものと思います。
はっきりとした工程や条件は分かりませんが、おそらく何らかの合成培地に培養し、十分に生育した乳酸菌を遠心分離か膜分離で集めて湿菌体または乾燥菌体として納入でしょう。
ちょっと疑問を感じるのは、第1回でも説明したように、乳酸菌には栄養要求性が厳しく、いろいろな栄養を入れなければ生育しないと言う性質があるということです。
これは、場合によると培養する培地にいろいろと成分を足さねばならず、コストが上がる可能性があるのではと思うのですが、そこのところ大丈夫なんでしょうか。
まあ、このような状況ですから、「乳酸菌を入れました」という食品はさらに増えてくるでしょう。
培養受託の会社も業績が上がるかもしれません。