爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「自治体ナンバー2の役割」田村秀著

市町村などの自治体のナンバー1は市長等ですが、ナンバー2は「助役」ということです。

この助役については、地方分権を進めるという点から見て、地方自治の変革を目指す中で現状がどのような役割であり、今後どのようにするべきかを検討する必要があります。

そこで、地方自治の研究をしてきた著者が、アメリカ、イギリスの同様な立場の人々との比較をしながら調査結果をまとめています。

 

地方自治制度が整備されていく中で、助役という名称が初めて登場したのは、1888年の市町村制の制定時でした。

その後、1911年には助役を必ず置かねばならないといった改正も加えられ、それまでの市会による選挙によって選任される方式から、市長が推薦し市会が選任する方法に改められました。

そして、1947年に地方自治法施行された時に現在の方式が確立しました。

選任も、市長が選任し議会の同意を得ると言う方式に確定しました。

 

アメリカでは自治体のナンバー2は「シティマネージャー」と呼ばれる職ですが、各地の自治体により様々な制度があり、必ずしも市長とシティーマネージャが並立するとも限らないようです。

しかし、多くの自治体では議会によって選任された行政の専門家であり行政府の実質的な長として政策を遂行する者とされています。

 

イギリスではチーフエグゼクティブと呼ばれる職がそれに当たります。

公選される首長とは別に、地方自治体の事務職員のトップとしての役割を果たします。

 

日本の市町村の助役は、出身にもほぼ似通ったものがあるようです。

もっとも多いのはその市町村の職員であったものが、そのまま助役に選任されるという場合ですが、それ以外にも所属する県の職員、国の職員、市町村議会議員等から助役になる場合もあります。

また、稀ですが民間出身者もなることがあります。

 

この点、米英の場合はシティマネージャー、チーフエグゼクティブともに専門職として確立しており、公募で選ばれるためにいくつかの自治体を渡り歩くと言う例も見られるようですが、日本の場合はそういった例はありません。

 

なお、女性の進出は助役の場合はあまり進んでいないようです。

米英も日本と比べれば女性比率が高いものの、他の職種や民間と比べればかなり男性に偏ったものになるようです。

 

平均年齢も日本はかなり高く、60に近いものです。これは、市町村職員などを長く経験した後に就任するために年齢があがるようです。米英では始めから専門職として就任するためにかなり若い人も見られます。

 

 日本では市長などの首長は公選制ですので、様々な経歴の持ち主がいます。

以前は役所でずっと働き、管理職も経験してから市長選に出馬し当選という人が多かったのですが、最近ではまったく役所に縁のない人が直接首長として当選して入ってくる場合も多いようです。

そのような場合に、ほとんど行政経験のない首長を補佐する助役と言う役割は非常に重要なものとなります。

民間から首長に当選し、助役も仲間を指名するという場合もありますが、多いのは役所の中から行政に通じた人を指名すると言う場合で、その際は首長との関係も良好で役所や議会とも通じ合える間柄ということが多いようです。

 

最近は地方分権の方向で進もうという風潮があり、その中で首長の存在も変わってきており、助役も変わらざるを得ません。

現行法制では首長は公選制であり、同様に公選された議会との二元的代表制を取っていますが、米英では必ずしもそうなっているわけではありません。

議会のみが公選であり、首長は議会が選挙するという制度もあるわけで、その検討も必要かと言われています。

ただし、いくら米英の制度が魅力的であってもそれをそのまま日本に当てはめるわけにも行きません。

慎重な検討が必要となるところです。

助役制度も、「副市長制度」に変えようという動きもあるようですが、どうでしょうか。

 

地方自治の実態など、これまではほとんど興味もなかったのですが、読んでみるといろいろな問題点もあり、可能性も多い分野かと感じました。

 

自治体ナンバー2の役割―日米英の比較から

自治体ナンバー2の役割―日米英の比較から