爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「キリスト教と戦争 愛と平和を説きつつ戦う論理」石川明人著

キリスト教徒は「愛」と「平和」を口にしていますが、戦争もしています。

戦争とキリスト教との関係というものについて、納得行く回答をされることはありません。

 

キリスト教徒は現在世界に23億人います。

彼らの中で一部の人のみが好戦的で、ほとんどは平和を愛するのでしょうか。

 

しかし、そもそも「愛と平和を祈ること」と「戦争をすること」とが矛盾するとは考えられていなかったとも言えるようです。

 

ローマ・カトリック教会は、「正当防衛は重大な義務である」としています。

軍事力行使も正当防衛であれば構いません。

ただし、日本のカトリック教会はそういった点については触れていないようです。

 

プロテスタントはもともとカトリックと争いながら教派を確立してきたため、戦うことを避けなかったとも言えます。

15世紀のヤン・フスに率いられた最も初期のプロテスタントは腐敗した教会に対抗してキリスト教を立て直すために、武力行使も厭いませんでした。

マルチン・ルターは暴動化する抗議行動は批判しましたが、武力行使を認めないわけではありませんでした。

 

そもそも、旧約聖書には多くの戦争の記述があり、異教徒は戦い滅ぼすことを当然のように描いています。

新約聖書になっても、イエスは決して剣を否定しているわけではありません。

 

ローマ帝国で初期のキリスト教徒たちは、平和主義であったと言われています。

「右の頬を打たれたら左の頬も」と言われるようなことを守っていたという印象があります。

しかし、中には立派な平和主義者も居たかもしれませんが、皆が皆そうであったとは言えないようです。

ローマ帝国の軍人の中にもキリスト教徒はいました。

彼らの中には棄教を迫られ殉教した人たちもいましたが、それは戦争をして人を殺すことを拒んだからではなく、ほとんどが「軍人として皇帝に仕える」ことを拒んだからでした。絶対神以外に仕えてはいけないという信仰を守ったからであり、別に戦争を行うことを問題視してはいませんでした。

 

アメリカ合衆国43代大統領、ジョージ・ブッシュキリスト教を深く信じていたそうです。

その使命感からイラク戦争やアフガン戦争を戦っています。

彼だけが間違ったキリスト教徒というわけではありません。

 

「愛と平和」と「戦争」の矛盾、それはキリスト教だけの問題ではないようです。

 

キリスト教と戦争 (中公新書)

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