様々な魚の漁獲高というものを見ていると、乱獲により資源が枯渇してしまうということがこれまでに何度も起きていますが、そればかりでも無いということがあるようです。
たとえば、1990年代までに非常に大量に取れたマイワシが、90年代以降は激減してしまいます。
しかし、その代りのようにサンマが増加してきます。
このような「魚種交代」と呼ばれる現象は昔から知られていました。
それは、漁業による乱獲というものが原因ではないようです。
この理由となるものとして注目されたのが「レジーム・シフト」でした。
地球規模の気候と生態系が変動するということです。
1983年に東北大学の川崎健教授が提唱しましたが、最初は周囲の反応は冷たいものでした。
しかし、徐々にその証拠が揃ってきて、認められるようになってきました。
特に海水温の上下がある一定期間でシフトすることにより、適正温度の差がある魚種が交代するというものですが、これを考慮するとなると、MSY(最大持続生産量)理論によって設定されている現在の漁業政策が変更を余儀なくされます。
MSY理論によれば自然の再生力以下の漁獲量であれば漁業資源の持続が可能なのですが、レジームシフトが存在するならば、MSYに従った漁獲量でも資源が減少することもありえます。
そして、どうやらレジームシフト理論の方が正しかったようです。
ただし、そうであったとしても漁業資源の維持のための施策が不要であるわけではありません。
どうも、日本の水産行政の行ったことは、レジームシフトにより急激に減少しつつある魚種をさらに漁獲するようなことだったようです。
したがって、自然に減少していった魚種をさらに叩き潰すようなことをしてしまいました。
このために、一定期間を置いて再びレジームシフトをして、元の魚種に戻るはずのところが、枯渇してしまったために戻らなくなったということも起きているようです。
日本の水産行政が、漁業者たちのためだけに行われているということは事実のようです。それが漁業資源を破壊してしまうことも頻発しています。
そして金を注ぎ込まれたはずの漁業者も操業持続が不可能という事態にもなっています。
野放しで取り放題ということはできないのですが、それをどのように規制していくかが大問題でしょう。
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