爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」森功著

いまだに真相が明らかにならず、次々と新資料が表に出て来る安倍総理周辺の疑惑ですが、その中でも一番大きなものは加計学園に関するものでしょう。

 

森友学園の問題が先に表沙汰になり、理事長の人柄もあり話題は大きく取り上げられましたが、国有地の値引き程度の問題でしかありません。

それと比べれば加計学園を巡るものは桁違いに大きなものを含んでいます。

 

本書は、ノンフィクション作家の森さんが、非常に広い範囲に取材をしてまとめ上げたもので、加計学園の加計孝太郎と安倍晋三の深く暗い交友がこれを生み出したということがよくわかるものです。

これと比べれば森友の籠池などは新参の取り巻きに過ぎず、そのためかあっという間に有る事無い事暴かれて葬り去られました。

加計はなかなかそうは行かないでしょうが、この本の記述を見ているとどうも韓国の前大統領と盟友の親交を思い出してしまいます。

 

森友問題では、官僚の忖度ということが言われましたが、もしかしたらその程度で済んだ話かもしれません。

しかし、加計学園獣医学部開設においては、忖度どころか首相周辺の強力な動き(ゴリ押し)があり、文科省農水省、獣医師会といった抵抗勢力を自ら跳ね飛ばして進んだと言わざるを得ません。

この本では、そういった行動を取るに至った事情を過去にさかのぼって明らかにします。あまり報道されていないものも含まれており、それを知ることでようやくスッキリと理解できた気がします。

 

安倍晋三加計学園理事長の加計孝太郎とは「腹心の友」だそうです。

「腹心」といえば「部下」と続くのが普通でしょうが、なにしろ本人がこう言ったそうで仕方がありません。

安倍と加計、それに三井銀行副頭取であった高橋精一郎は、1977年秋から南カリフォルニア大学に留学していた時に同級生ということで、40年以上の付き合いです。

 

加計孝太郎の父親、加計勉は広島で予備校経営から始め、岡山に岡山理科大学吉備国際大学を創立、岡山では有名であったそうです。

孝太郎は2001年に父親から理事長の座を譲られ、自ら経営を始めると東京進出を目指します。

その手段となったのが、千葉県銚子市に開設した千葉科学大学でした。

そこは薬学部、看護学部、そして危機管理学部という聞き慣れない学部を持つ大学ですが、ここに実は獣医学部を開きたかったようです。

しかし、獣医学部は獣医師の過剰を防ぐためと称して新設を認めないという文科省方針があり、それが不可能となりました。

それでも大学は2004年に開校、その開学式典には安倍は駆けつけて祝辞を述べています。

加計の獣医学部開設の希望も熟知していたのは間違いありません。

2014年に千葉科学大学開校10周年記念式典が開催され、それに出席した安倍が語ったのが「腹心の友」という言葉だったのです。

 

腹心の友の交友は夫婦や家族ぐるみのものです。

安倍昭恵はあまり酒の飲めない晋三とは別行動で、酒豪の加計孝太郎と飲み歩くということがあったそうです。

また、加計孝太郎の前妻光子が離婚した後、あらたに再婚した20歳以上も若い後妻は安倍の紹介という話もあるようです。

その交友関係に、安倍の取り巻きの政治家たちも加わり、広がっていきました。

 ちょうとその頃に文科大臣であった下村博文も家族ぐるみの親密な交際をしており、加計の大学新設を後押しするためにどうしても文科大臣就任を目指し、当時森喜朗が強く押していた馳浩をはじき出しての就任だったとか。

 

加計は学校をいくつも経営しているとは言え、その目標はあくまでも金儲けということのようです。

その姉も岡山県内で別の学校法人を運営しているのですが、そのあまりにも露骨な経営方針に加え、孝太郎の再婚相手との問題もあり、ほとんど絶縁状態になっているとか。

そのような経営感覚で目をつけたのが「獣医学部」というものだったようです。

医学部ともなると、設備も格段に費用がかかり講師陣にも高給を払わなければなりませんが、獣医学部となると驚くほど簡単な施設で済み、人件費も節約できる上に、獣医も6年教育制となったために授業料収入が見込めるためです。

しかし、獣医師会や農水省が危惧していた通り、獣医師の余剰感というものは強く、卒業生がきちんと収入を得られるかどうか不透明のようです。

獣医といっても、地方の畜産業のための公務員などと、都市部のペット対応の獣医師とではまったく状況が異なり、地方公務員は人員不足がひどいものの、その給与は安く希望者が居ないだけ、都市部の獣医はすでに過剰だとか。

 

2017年12月出版という本書ですが、現在(2018年4月)にいたりさらに疑惑を増すような証拠が続出です。本書の記述が基本的に誤りではないということがよく分かります。