爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「マッコリの正体」ホ・シミョン著

韓国の伝統的濁酒、マッコリは最近では日本でも女性を中心に人気が上がり、よく飲まれているようです。

本書は、現在韓国のソウルで「マッコリ学校」という、マッコリについて様々な面から教えてくれる学校の校長を務めているという、ホ・シミョンさんが書かれたものです。

 

マッコリというのはどういう酒かというと、韓国国内でも多くの種類が作られており一口では言えないようなもののようです。

 伝統的なマッコリの製法の主なものは、小麦の麹にうるち米を入れたものだったのですが、日本風の粒麹も使われたり、トウモロコシや小麦粉を使われたりする例もあり、その原料の違いは当然ながら味の違いにも現れてきています。

さらに、最近では植物薬材料の添加も可能となり、高麗人参やモチ粟、黒ごまのマッコリ、2003年には果実原料の使用も許可されたために、ブドウマッコリ、ポップンジャマッコリなども出現しています。

 

ただし、そのようなタイプの違うマッコリが続々出現してくる一方で、マッコリ醸造場の数は激減しているようです。

そもそも、自家醸造として庶民が手軽に作っては飲むという文化であったために、各町村に小さな醸造場があり、そこで簡単な料理と共に供するという酒屋がいくつもあったのが、大きな醸造会社が大量生産という流れができてしまいました。

 

日本の植民地であった時代に酒税の徴収上の理由で醸造場管理という意味から小規模醸造場の統合ということが行われたのですが、戦後独立後も政府の統制が強まり独自の文化としてのマッコリ醸造も影響を受けたようです。

 

2009年にマッコリブームが盛り上がりましたが、これには日本でのブームも大きく影響したようです。

日本では女性が健康に良さそうだということでマッコリを飲むということが流行ったのですが、そのために前年比30%以上の増加ということになり、韓国から輸出されるマッコリの90%以上は日本へと向かいました。

韓国のマッコリブームもそれに影響されたという面もあるようです。

ただし、それはソウルの濁酒製造協会というところが作る「長寿マッコリ」というブランドが大規模に作る製品が主となっているということのようです。

韓国国内では、京畿道の抱川というところのマッコリ、釜山の金井山城マウル、全州などが伝統的な産地として有名ということです。

 

マッコリに使う麹は、日本風にアスペルギルス・カワチを使ったバラ麹も使われることがありますが、伝統的には小麦などの生の穀類を粉砕してから水を加えて練り、自然にカビや酵母などを生やした麹を使うということが広く行われています。

そこにはクモノスカビ(リゾプス)やケカビ(ムコール)といったカビや乳酸菌も含まれているために、複雑な味や香気、酸味が出てくるために独特のマッコリの風味を作り出します。

著者はこのような伝統的なマッコリの作り方を教える学校をソウルで運営しているそうです。

 

韓国では国内法の改正で自家消費する分ならば自家醸造も可能となっているそうです。

マッコリを自分で作って楽しむという、極めて文化的なことができるというのは羨ましいかぎりです。

酒税のために厳しい統制を続けている日本の状況というのが非文化的であるということでしょう。

 

マッコリの正体――その歴史と文化

マッコリの正体――その歴史と文化