地理が関係する問題の理解には、地図に図示したほうが分かりやすいということがよくあります。
この本は地理学者という著者が、そういった例をたくさん集めて示し、地図というものの有効性を分かってもらおうという趣旨で書かれたようです。
その最初のページは、日本地図をヨーロッパの中に置き見比べています。
数字だけ見ても、ヨーロッパのほとんどの国より日本の方が広いということは分かるのですが、実際に日本より広いのはフランス・スペイン・スウェーデンの三カ国だけであることが地図を見ればはっきりします。
また、その位置も北緯で言えば地中海からアフリカ北部にかけてであるということ、東京より南の国は一つもないということも、なかなか盲点になりやすいところでしょうか。
河川の長さでは、日本一は信濃川というのが常識ですが、これもずっと変わらないわけではありません。
大きなところでは、利根川の付け替えというのがありました。
江戸時代初期までは東京湾に注いでいた利根川の氾濫危険性を下げるために、それまでは鬼怒川の系統であった銚子付近に流れ出す流路に付け替えることで、利根川の長さは約50km長くなり、流域面積も日本一になったそうです。
また、北海道の石狩川は非常に蛇行が多い川だったのですが、それでは氾濫するのでかなりの部分を直線化して改修しました。そのために、中流域を中心に約100kmも短くなったそうです。
現在の石狩川は268kmですが、これに100kmを足すと368kmとなり、信濃川よりも長かったということです。
他の本でも「地図による視覚化」ということを扱ったものがありましたが、この本はそういった利用の有効性をはっきりと示してくれるものになっているようです。