高城さんの本は前にも一度読んでみて、そのあまりにもアクが強いのにあてられてしまったのですが、懲りずにまた読んでみました。
今回の本はデフォルトと言う国家財政破綻(債務不履行)の状態に陥ったらどうなるか、ご自身の体験に基づき書いておられます。
その裏にある国際金融資本の暗躍や、世界銀行、EU、IMF等のやり口にも鋭く目を向けるという、前に読んだ本の印象とはまったく違ったものを感じました。
高城さんは国際的なクリエーターと言うことで、世界のあちこちに暮らして制作を続けてきたということですが、なぜか住んでいるところで国家財政破綻と言う状況になってしまったということがあり、そこでの社会の緊迫感、不安等住んでいる人の感想も直接聞いてその苦境を見てきたということです。
冒頭にあるのは、2008年ロンドンに居た頃の発砲事件。高級住宅街でそれまでは法廷弁護士であった男が自宅から無差別発砲を行ったという事件のすぐそばで銃声を聞いたということです。
弁護士業務の傍ら投資をしていたのが、リーマンショックで一瞬にして全財産を失って犯行に及んだというものでした。
その後、スペインに移り住んだのですが、そこに追いかけるようにリーマン・ショックの余波として”ユーロ危機”がやってきます。
その直前まで続いていたスペインの不動産バブルもあえなく崩壊。不動産は暴落し失業率は50%以上にまで達しました。
そのような状況でも人々はなんとか生きていたそうです。
デフォルト(債務不履行)なんていうことはそれほどは無いだろうと思うと間違いで、中南米やアフリカの国々ではしばしば、ヨーロッパでもポーランド、ルーマニア、ロシア等で起きています。
1997年に始まるアジア通貨危機では、一見好調に見えた国々の経済があっという間の破綻しました。
その寸前にはどこでも好景気で浮かれたように見えます。
しかし一度市場のリスクが表面化すると海外からの投資資本はあっという間に逃げ出してバブルは吹っ飛んでしまいます。
ところが、その恐慌を待ち望んでいるかのような人々がいます。
いわゆるヘッジファンドという投資組織で、このような状態になると空売り、売り浴びせといった手法を駆使し最後の儲けをつかもうとします。
それでさらに対象国の傷口が広がります。
ギリシア危機、スペイン危機がなんとか治まった2013年にはキプロス経済が突然のように危機に瀕します。
それはあまりにも急であったのでほとんどの国民が自分の銀行預金をおろすこともできず、そしてそのまま預金の大半を没収されるということになります。
2008年のユーロバブル真っ只中では、ヘッジファンドなどの投資マネーが行き場を探していたのですが、そこにキプロスがユーロ圏参入という、モンスターマネーの餌食となる状況がやってきました。
余剰マネーはキプロスで不動産を買いあさり、土地は高騰しました。
さらに、キプロスの低すぎる法人税を目当てに、タックスヘイブンとして金融センターとして発展することになります。
そこにさらにロシアマネーも流入し大変なことになります。
キプロスの金融機関も経験のない大量資金流入に我を忘れ、極めて近い関係であったギリシア国債をせっせと購入しました。国家資産のおよそ25%がギリシア国債となりました。
キプロスの銀行も最大のものと二位のものが一気に破綻するという事態になりました。
銀行預金も1人10万ユーロ以上は引き出せない、事実上の没収となりました。
しかし、何らかの情報を得たものたちはそれ以前に退避させていました。結局力のない庶民が餌食となったのです。
このように、財政破綻というものは一般国民にとっては非常に厳しいものですが、これをチャンスとして待っているかのような連中もいるということです。
上述のヘッジファンドもそうですし、ベンチャーキャピタルも狙っています。
こういった混乱というものは強者にとってはチャンスなんでしょう。
日本がこのような財政破綻にならないかどうか。絶対大丈夫とは言えないように思います。