著者の鈴木さんは出版社の編集長などを経て著述業をされていたということで、知人友人なども実業界に多く、さまざまな話を聞いてきたようです。
現代においても仕事の上での問題点というのは、古代とあまり変わらないようで、昔の知恵がいっぱいに詰まった故事寓話にそっくりの状況が出ています。
これらを見直すことで、今の社会も生きやすくできるのではないかという形で書かれている本です。
かつて、ある中小企業の社長の新人社員を前にしての訓示を聞いたことがある。「わしなどはろくな学校も出ておらん。なんの能力もないとるに足らん男だ。そんなわしが社長になっているくらいだから、うちの部長連中は大学出といっても大したことはない。みんな負けずにがんばれ」
しかし、聞いていて下手な訓示だと感想を持った。
なぜか新入社員たちは拍手をしていたが、列座していた部長連中は鼻白んでいた。
こういう社長に聞かせたい話が史記高祖紀にある例の話です。
といった具合に多くの話をつなげていきます。
まあほとんどが聞いたことのある話だったのですが、一つだけ知らなかったものがあるので記録しておきます。
説苑(ぜいえん)の斉の項に桓公が人集めをした時の話というのがあり、なかなか有能な才子が集まらなかった時に、一人の卑しい身分の者がやってきて「九九ができる」として雇ってもらおうとしたということです。
そんなことは誰でもできるだろうと桓公が言うと、「桓公が賢君だということが知られているので、有能な士はじぶんより優れた君主は避ける。もし九九ができるだけのものを厚遇すれば、他の有能な士も来るだろう」と言い、実際に彼を礼遇すると多くの人が来るようになった。
というものでした。
燕の郭隗の話と似たようで少し違った雰囲気の話でした。