爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「古代遺跡を楽しむ本」吉村作治著

著名な考古学者の吉村さんが、世界各国の古代遺跡を紹介するという本で、一箇所ごとにその場所の思い出と行き方、注意などがガイドブック風に付けられているものです。

 

まあこういった旅行ガイドに一々文句を言っていてもしょうがないのですが、ちょっと気になるところも数々あります。

2000年出版という本でありながら1997年に起きたルクソール事件(イスラム過激派が観光客を襲った事件で日本人も多数が死傷)について何も触れられていないのは何事でしょうか。

 

一応、本の中には旅行の危険性も書かれていますが、それも通り一遍の「強盗、置き引きに注意」と言った程度のものです。

「観光客を狙ったテロ」というものも現在の世界では非常に重要な問題ですので、知識の不足した人々に夢を与えるだけでは危険極まりないと言うべきでしょう。

 

また、トロイの遺跡については、最近その専門家の著書を読み、シュリーマンの発掘姿勢やその結論などについて批判的な意見も目にしました。

sohujojo.hatenablog.com一言で言って、シュリーマンがこの遺跡をトロイアと考えた根拠も薄弱であり、発掘技法も拙劣であったというものだったのですが、吉村先生も考古学専門であるならこういった情報についてまったく知らないはずもないのに、通俗的な「夢を叶えたシュリーマン」という紹介に終わっています。

 

その他の遺跡についてはそれ以上の情報もなく、判断できるものはありませんが、どうも書いてある全てを信じるべきかどうか、迷ってしまうようなものでした。