政府や大企業の公式発表でも分かりにくいものが多いのですが、そこには誰に読ませ分からせようと言うのかがはっきりとできていないせいもありそうです。
そのような大きな話ではなくても、誰でも会社で営業のプレゼンをしたり、会議で発表したりすることはありますが、そこでも相手に分からせるという意図ときちんと持たないと成果は得られません。
「ニュース解説」という分野では独自の位置を占めている池上さんですが、元々はNHKの記者でした。
それがなぜかテレビ番組のキャスターに抜擢され、さらに「週刊こどもニュース」という番組でお父さん役を11年間務めることとなりました。
子供を相手にして、分かりやすい説明をするという経験が現在のような力を着けるきっかけとなったそうです。
この本は、会社の会議で発表するような人たちに、どうすれば分かりやすく自分の考えを伝えられるかということを気づかせるように書かれています。
とは言っても、一部のテクニックを除けばそれ以外の状況でも十分に適用可能な考え方というものが分かるようになっています。
まず、「話の地図」を相手に示す。
全体像が分かるように最初に「リード」を付けると、聞く方も安心できます。
リードとは話の内容に興味を持たせるような序文ですが、完全な要約ではなく導入部ということです。
また、予定所要時間というものも最初に呈示しておくことが必要です。
テレビの番組構成を意識すれば、図解や映像を適切に使うことが聞き手の理解を助けることが分かります。
画像を作ってから原稿を書き直すことも必要です。
構成もさることながら、一つ一つの言葉の使い方、すなわち「日本語力」というものもなければ自分の言いたいことが伝わる前に相手の聞きたいという意欲を失わせます。
無意味な接続詞が連続しては興を失わせます。
「そして」「ところで」といった言葉を口癖のように入れてしまう人がいますが、これではかえって文章の論理性を損ないます。
「話は変わるけど」とよく言う人がいますが、これは相手をがっくりさせます。それまでの会話は何だったのかと一気に気持ちが冷めてしまいます。
「いずれにしても」という言葉も禁句のようです。話を強引に終わらせる重宝な言葉ですが、これは話をまとめようとしているように見えて、実際は話がまとまらなかったことを示しています。
あなたの話を聞いている人はどのような人なのか、それを分からないと本当は話もできないということです。
それを一所懸命に考えること、それが「相手への想像力」なのです。