世界でもトップクラスの長寿国でありながら、健康不安が増大している日本ですが、そこには巨大になった健康産業も大きく関わってきます。
このような「健康不安社会」の様相を、信濃毎日新聞社の編集委員である編著者飯島さんを中心として各分野の専門家に取材し、紙上で連載されたものをまとめて本書としました。
健康不安社会を作り出している社会的雰囲気の基本から、様々な健康情報、そして医療分野の話まで広範囲なものとなっており、群馬大学の高橋久仁子さん、法政大学の左巻健男さんなど、馴染みの顔ぶれの記事も含まれていました。
香川大学の上杉正幸さんの話にあるように、「健康」というものに対する観念が徐々に移動し(させられ?)求められるレベルがどんどんと上げられているのかもしれません。
また、「健康でいる」ということは個人の問題であるのに、あたかもそれが当然の責任であるかのような言い方もされています。医療費増大を口実として使われることがありますが、実際はそこまで悪くないのに対処が必然のようにも仕向けられています。(メタボ問題)
北里大学新村拓さんは、健康が義務であるかのような風潮はナチスドイツや戦前の日本などの体制でも見られたもので、制定された健康増進法の危うさを語っています。
健康情報への対応で語られている上述の高橋さん、左巻さん、そして京都大学の伊勢田哲治さんなどは、皆「科学を恣意的に歪めた商業化情報」の害を論じています。
マスコミを圧倒的な情報量で支配しているかのような健康産業ですが、そこから溢れ出してくる情報に対するのは難しいことかもしれません。
このような大きなテーマに取り組んだのは、さすが信濃毎日新聞と言えるかもしれません。