著者の鶴岡さんは歴史の専門の研究者というわけではなく、塾の講師などをされているようですが、この本で取り上げられている人々はあまり有名であるわけではないものの、こうやってその人生を描くとそれぞれがまた独自の輝きを持つように思えます。
「あまり有名ではない人々」と書きましたが、中ではハンニバルやダヌンツィオ、ガロワ、ピエール・キュリーはそう言っては申し訳ないかもしれません。
しかし、1170年にカンタベリー大聖堂で4人の騎士に惨殺された大司教トマス・ベケットなどという人の名は私も初めて聞きました。
プランタジネット朝の祖ヘンリー2世の腹心であったベケットは王と仲違いをしたために、王の意志を忖度した騎士たちによって暗殺されました。
まだ十分に勢力の強かったローマ教皇はトマス・ベケットをすぐさま聖人に列し、型ベリーは巡礼の地として栄えることになります。
チョーサーの「カンタベリー物語」もその巡礼たちを描いたものです。
19世紀末のフランス第3共和制は弱体化と腐敗で危機的状況だったのですが、そこで急速に力を得たのがジョルジュ・ブーランジェでした。
陸軍大臣に就任した彼は政府改革を進め、旧王室関係者の排除に成功します。
ブーランジェの人気は上昇し、国家元首に推挙する動きも強くなりました。
このまま行けばナポレオンのように皇帝就任もあり得たかもしれません。
しかし反対派のギリギリの攻防で反逆者と認定されてしまいます。
もう少し押すべきタイミングを掴んでいれば。
サッカーの試合が戦争にまで及んでしまったとして有名な、1969年のホンジュラスとエルサルバドルとの間のワールドカップ予選と、その後の戦争ですが、やはりあくまでもサッカーはそのきっかけに過ぎず、それ以前に植民地時代からの大農園経営と、そこから逃れた農民たちの不法移民化をいった問題が根底にあり、どちらの国民にもその矛盾が重くのしかかっていたためでした。
「サッカー戦争」と呼ばれますが、その本質を見逃せば誤った観念を持つかもしれません。
やはり、有名であろうが無名であろうが誰もが精一杯人生を送ってきたということなんでしょう。
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