爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「羽生必敗の法則」田中寅彦著

現在の将棋界では、藤井聡太四段が中学生棋士として目を見張る活躍をして注目を集めていますが、およそ30年ほど前には羽生善治(現在王座棋聖)がやはり中学生でプロ棋士となり大活躍をしました。

当時は今ほど騒がれもしませんでしたが、その実力は圧倒的なものであり、その後次々とタイトルを奪取、そしてプロ入り後およそ10年してタイトル全制覇という七冠独占という偉業を成し遂げます。(名人・竜王・王座・棋聖・王位・王将・棋王

その後若い棋士たちに次々とタイトルを奪われていきますが、それから20年以上経った今でも王座と棋聖を保持しているということを見ても最近までの将棋界を制覇してきたと言えるでしょう。

 

この本は、七冠独占達成の直後に、やはりプロ棋士である田中寅彦氏が書いたもので、羽生を破るにはどうしたら良いかということを、真面目とジョークをかなり交え(ジョークの方が多いが)並べてあります。

田中氏はその当時羽生相手に対戦数は少ないものの4勝1敗と勝ち越しており、そこでこのような本を書いたと言っていますが、これもジョークです。

しかし、その他の棋士には羽生はその年8割以上の勝率であり、それもほとんどがタイトル戦といったトッププロ相手の勝負ですので破格の強さであったということは間違いないところです。

 

そのような圧倒的強さの相手にどうやったら勝てるのか。

もちろん、他の棋士も全てが対羽生勝利を目指して考えに考え試合に臨んできたのでしょうがそれでも羽生は負けませんでした。

田中氏の分析によれば、羽生は得意戦法というものを持たずどのような戦法でも変わらずに力をフルに発揮できたそうです。

ただし、その時点ではやや体力不足の面があり長時間の2日制タイトル戦に若干弱いところがあったとか。

また、なぜか関西在住棋士に弱い面があるとも。

あとは、ほとんど冗談ですが、下品な相手には嫌悪感を感じて弱くなるとか、意表をついて対局中に頭を剃り上げて登場するとか。

 

ただし、このような本を参考にした棋士たちもいなかったようで、その後の羽生の戦績は恐るべきものであり、現在でも勝率は7割以上あるようです。

藤井聡太君もすでに一回対戦したようですが、このあとは重要な局面での対局も行われるでしょう。新旧天才棋士の対決が楽しみです。