今週の「安心?!食べ物情報」でも渡辺さんが取り上げられていますが、各地で病原性大腸菌の中毒事故が頻発しているようです。
http://food.kenji.ne.jp/review/review927.html
この中で最も規模の大きいのは群馬埼玉のチェーン惣菜店のものでしょうか。
この事故では、工場で基本となるポテトサラダ部分を作り各店舗に配送、そこで若干の手を加えてさらに客が自分で盛り付けるという業態のため、原因がどこにあるのかの特定が非常に困難になっているようです。
最初は、各店舗でのハムなどを加える作業が怪しまれたのですが、他の店舗でも同様の中毒者が出たことでやはり元の食品工場ではとなっているようです。
今までのところは原因追求の検査ではO157は検出されていないようです。
良くありそうなのは、横浜の焼肉店でしょうか。しかし、これも牛肉に最初から汚染菌が居たとは限らず付け合せの野菜である可能性もあり、また従業員が感染していたためという可能性もあり、納得できる検査結果が出るかどうかは分からないでしょう。
このように、O157の感染経路が分かりにくいのは、その非常に強い感染力にあります。
いろいろなところに解説記事がありますが、医師会のページを貼っておきます。
ここで注目すべき点は、
O157の感染力は非常に強く、100個程度のO157が身体の中に入っただけでも、病気を起こしてしまいます(多くの食中毒では、100万個以上の菌が身体の中に入らないと食中毒は起こりません)。
という点です。
細菌の100個などというものは非常にわずかなものであり、どこから紛れ込むかも分かりませんし、同じ食品であってもその一部に付着していただけでもそこを食べた場合は病気になるということです。
そして、その別の部分の食品サンプルが保存してあってもそこには菌は居ないということもよくあることです。
大腸菌は動物の体内、特に名前通りに大腸の中などが本来の住み家ですが、そこから外に出てもすぐに死ぬわけではなくそのまま生き残るというしぶとさを持っています。
そのため、動物の排泄物から水源などに紛れ込み、その水をかけた農産物に残って感染源になるということも時々起きるわけです。
なお、家畜などではO157が体内に居ても別段病気になるわけでもないので、見ただけでは分かりません。
このように、危険極まりないやっかいな細菌ですが、上の医師会HPにもありますように、「熱に弱く75℃1分の加熱で死ぬ」ということがあります。
これがあるために、その危険性ほどには食中毒事件が頻発ということにはならずに済んでいるのですが、日本人の「ナマモノ大好き」性のために度々の事故発生となるわけです。
今週の3例も、ポテトサラダは混ぜる段階で汚染されればその後は加熱工程がありませんし、焼肉というのは度々発生することでも分かるように「生肉が食卓にのる」という弱点のために危険性をはらんでいます。
もう1例のイタリアンレストランでは「カルボナーラパスタ」が原因食品と疑われているとか。これは完全な加熱をしませんので十分に感染源となる資格があります。
なお、このレストランでは従業員も一人感染しているそうですが、これは感染源である可能性もありますが、逆に被感染者であるかもしれず、確定するまでは何とも言えないところです。
対策はあちこちでよく言われています。肉はよく焼いて食べるとか、生肉を扱うトングで焼けた肉を扱わないとか、食品製造従業員はトイレなどのあとには十分手を洗うとか、生野菜は十分に流水で洗浄するとか、まあ一つ一つをきちんと意識的に遂行していくということでしょう。
食中毒の場合は、完全に感染源ということが証明されなくても疫学的状況が整えば(つまり、感染者が共通して食べたことが明らかな食品が特定されれば)その製造業者などは営業停止や禁止処分が出されます。
場合によっては中毒者が死亡することもあり得るわけで、そうなれば補償のために店が潰れるという事態に至ったこともありました。
業者にはくれぐれも対策をきちんと履行してもらうとともに、消費者側としても危険が存在することを認識しておくべきでしょう。