これまでの説明で、日本の現状では過疎化している地方を中心に自動車社会を解体し自立して自給自足に近い経済体制を取ることができる地域を再生し、脱エネルギー社会に向けたスタートを切ろうという目標を提示しました。
しかし、その手段としてあくまでも租税体制の改革ということで進めるということは、税金さえ払えば何をやっても良いということを許すという意味でもあります。
自動車関係の各所に現行の数十倍もの税金を課し、事実上自動車を使えなくするというのですが、それでも使いたいという人々が表れてくるはずです。
前の話で、意識的に東京などの都会のことについては触れることを避けました。
当然のことながら、ここに住む富裕層の人々はその程度の税金など気にも留めずに自動車使用を続けるはずです。
彼らは、また東京で食料自給などということを考えるはずもありません。全国各地からいくら金がかかっても物品を購入しようとするでしょう。
トラックが使いにくくなっても金さえ積めば何とかしようとするでしょう。
そのような事情ではどうしても金になびく人々も増え、脱エネルギー社会構築の動きがかなり押さえられるかもしれません。
さらに、こういった脱エネルギー無視の抵抗勢力の存在という問題よりもはるかに大きな弱点が存在します。
それは、このような社会でも必ず実施しなければならない各種製造業、(農林水産業等も含む)です。
この連載の最初にエネルギー使用の現状を提示しました。
原油からのエネルギーの半分近くを占める輸送用燃料を大幅削減するために、脱自動車社会を進めるわけですが、それでもまだ原油エネルギーの半分以上は残っています。
家庭用・業務用というものと、産業用石油製品が非常に大きいことが分かるでしょう。
特に、このうち業務用石油使用先の農林水産業が大問題となります。
つまり、「石油供給を絞れば農業・水産業等食糧生産ができない」ということです。
日本の農業が石油漬けであるということは、しばしば言われることです。
重油を炊き続ける温室栽培や、トラクターなどの機械漬け農業、農薬や肥料もエネルギーが無ければ作れません。
農業生産量あたりのエネルギー使用量は世界でも北欧と並んで高いのが日本だそうです。
さらに、水産業なども石油高騰となればすぐに操業中断といった話が出てくるように、石油依存が非常に強い産業となっています。
このように、脱エネルギーで自給自足経済の構築から、真の「持続社会」実現と言っても肝心の食料生産ができないというのが実情でしょう。
これをどのようにすればよいのか。農業機械用に限って石油供給などと言っても、貰った方は輸送に横流ししてしまうのも目に見えています。
このあたり、非常に悩ましいところでしょう。
また、石油を使ったプラスチックというものも現代文明を支える欠くことのできない物です。
もしもプラスチックがなくなればどうなるか。ほぼ社会は崩壊ということになりそうです。
いまさら紙や木で容器や包装資材などを作ろうとしても不可能です。
そうなればあっという間にこの日本でも森林が根絶されるでしょう。
これもすぐに解決できるものではありません。だからこそ、今から将来を見据えて対応策を考え出すべきなのですが、それに取り組むところなどありません。
このように、脱エネルギー社会構築のほんの一歩でも、実質的には自動車社会に一石を投じるだけでこのように大変な社会変動になります。
それでも石油消費の半分を減らせるかどうかという程度の効果しか出ないわけです。
このようなことでは、それ以外のエネルギーの削減などはるか彼方の話のようです。
これは現代社会がいかにエネルギー依存の度合がひどすぎるかということを如実に示しているからです。
また、現実社会でしょっちゅう語られている「省エネ」などというものも、実質的なエネルギー使用削減などに至るはずもなく、単なる装置メーカーの拡販でしか無いということも示しています。
いろいろと、問題点が山積みです。それでも取り組みを始めなければならないのでしょうか。
(一旦休憩)