著者の小川さんは商社勤務やフリーター、市役所勤務を経て高等専門学校の教授となったという、変わった経歴の方です。
現在は、高専で教えながら地域での活動ということで「哲学カフェ」なるものを開いて、自分たちの周囲に密接に関係のある問題を自ら考えるということを広める活動をされています。
本書第6章に触れられているように、現代はインターネットを使わない人は居ないと言えるほどネット社会になっていますが、そのために特に若者の間に「ネット頭」というようなほとんど自分で考えるということ無しに、全部ネットで検索して済ませようという人たちが増えてしまいました。
学校のレポートも「コピペ」で済ませようというのですが、さらにテレビを見るときもスマホでネットの書き込みを見ながらでないと番組を見ることができないという人も居るそうです。
このような「ネット頭」は確実に思考力を侵食しているとしか言えません。
そこで、自らの頭で考える「哲学頭」養成のために「哲学カフェ」という活動を始めたということです。
そこで考えることは、哲学という語感から思いやすいような「人間どう生きる」といったことばかりではありません。
地域社会をどうするかといった、身近な話題から考えていくことも哲学であるということです。
特に、著者の住む山口県などでも地方の衰退ということが大きな問題となっています。これに対処するように考えていくのも哲学だそうです。
もちろん、それらの問題に対しての解決策を討議するということもありますが、それ以上に狙いとしては「思考力の向上」「プレゼンテーション能力の向上」「コミュニケーション能力の向上」「哲学に関する知識の習得」「純粋に哲学を楽しむ」というものだそうです。
そのためか、本書前半に書かれているその討論内容と言える部分はややつながりがわかりにくいものでした。
「公と私は対立するか」「エリート民主主義は克服できるか」「共同体について」等々、これらも哲学カフェで取り上げられた討論内容であるならば理解できます。
最後に付録として「哲学カフェマニュアル」なるものも付けられています。しかしどうも著者の一番言いたかったところはこのマニュアルを活用し、哲学カフェをあちこちで開催してねということだったようです。
日本を再生!ご近所の公共哲学 ―自治会から地球の裏側の問題まで (生きる技術!叢書)
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