日本列島は火山や断層の上に乗っているようなもので、地震や噴火の脅威を常に受け続けているようなものですが、それらは非常に美しい風景ともなっており、観光資源としても重要なものです。
地球の歴史の中で生まれてきた地質や地層などの典型を見られるという意味で、ジオパークというものを定める活動が行われており、2017年1月時点で国内ジオパークは43地域選定され、そのうちユネスコの世界ジオパークに認定されているものは8箇所となっています。
本書著者の高木さんは、地球科学の研究者であるとともに、ジオパーク運動に深く関わって来られ、日本ジオパーク委員会顧問だということです。
本書はそのようなジオパークを例に取り、日本列島の5億年の歴史をたどりながら、実際の地形や地層などに表れているところを、非常に美しい写真で示しています。
なお、ほとんどが有名観光地となっているところであり、私も訪れたことがある場所が多数含まれています。やはりこういったジオパークとしての要素は観光資源としても重要であるということなのでしょう。
地層が長年にわたって積み重なっているということでは、アメリカのコロラド平原などは典型的なものです。コロラド川により侵食されたグランドキャニオンは壮観ですが、地形的にはただほぼ水平に数十億年分重なっているだけとも言えるものです。
しかし、日本列島ではプレートが押し合いへし合いで複雑な動きとなり、下仁田ジオパークではおよそ2km四方の白亜紀の地層が完全にひっくり返っている場所もあるそうです。
日本列島はフィリピン海プレート、太平洋プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートがぶつかり合っているところに形成されました。
プレート同士がぶつかり合うと一方が他方の下に潜り込むのですが、その時に水分も引きずり込むことで火山フロントも形成されます。
それとともに、プレートの動きにつられて動いてきた付加体と呼ばれる岩塊が地上に残ることになります。
日本列島というのは、実はこのような付加体が地形の骨組みとなり、その上に積み重なった堆積岩と、火山噴出物でできているようなものと言えるそうです。
さて、こういった基本知識の解説のあとはいよいよ「年代別」典型例の紹介になります。
最初は「日本最古の鉱物」です。 ただし、この本には「日本最古の」がつくものがいくつも出てきますので、注意が必要です。
日本最古の鉱物は、立山黒部ジオパークの宇奈月花崗岩に含まれるジルコンだそうです。
宇奈月花崗岩自体は1.8億年前にできたものですが、その中にもっと古い時代の鉱物片としてわずかにジルコンが残っていました。
日本最古の岩石としては、岐阜県上麻生のジュラ紀地層の中に礫(小石)として含まれていたものだそうです。これが20億年前。なお、ここは私の祖母の出身地の近くだそうです。
日本最古の岩体、つまりある程度の岩の塊として残っているものです。
これには、茨城県日立、熊本県竜峰山、宮城県早池峰などが挙げられます。
ここで驚いたのは「熊本県竜峰山」でした。こう聞かされてもほとんどの人はどこだか分からないと思いますが、熊本県でも南部の八代平野の東側の低山です。
我が家から道路に出ると眼の前にそびえている山です。こんなところにそういうものがあったとは。
日本最古の地層は、岐阜県上宝村の飛騨外縁帯と言われているところです。4.5億年前ほどでしょうか。オルドビス紀の化石を含みます。
その後のシルル紀、デボン紀以降の堆積岩や石灰岩は化石を大量に含んでいます。
これらの地層が日本列島の骨格を形成しました。
時代は一気に下り、2000万年前の新第三紀以降になると、日本海が拡大していきいよいよ日本列島が分離されてきます。
そこに取り上げられているジオパークなどの写真は有名観光地が続出です。
山陰の香住海岸、青森の仏ヶ浦、茨城の袋田の滝、栃木県大谷石、等よく見る風景が続きます。
第四紀に入り、現在まで続く火山活動が活発化し多くのカルデラが形成されてきます。
こういったカルデラがすべて大規模噴火を伴っていたことを思うとこれが現在起きたらという怖さとともに興味も湧きます。
妙義荒船もカルデラの痕跡でした。北アルプスの槍穂高付近にも現在は表れていないカルデラがあったそうです。
日本最大級のカルデラは9万年前の阿蘇噴火でした。これでは九州のほぼ全域を火砕流が埋め尽くし、火山灰は北海道まで確認されます。
さらに、2.6万年前には姶良カルデラの大規模噴火、そして今のところ最後のカルデラ噴火である、7300年前の鬼界カルデラ噴火でした。
地質時代の長さから考えるとこのような噴火はごく最近と思えるものです。
しかし、阿蘇第4ほどでなくても姶良カルデラ噴火でも今起きれば日本はほぼ破滅でしょう。
最後の方には、地震断層の実画像として、濃尾地震の根尾断層、阪神淡路地震の野島断層のものが載せられています。地面の下に大きな力がかかっていて、時折動き出す。日本列島の宿命と感じます。
怖ろしいことかもしれませんが、しかしその風景は美しい。
年代で見る 日本の地質と地形: 日本列島5億年の生い立ちや特徴がわかる
- 作者: 高木秀雄
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