定期的に書いていこうと思っていたお酒の話ですが、政治の方がドタバタですっかり間が空いてしまいました。
勤めていた会社でも本格焼酎(乙類焼酎)を作っていくこととなったのですが、先行する老舗の会社の作る焼酎との品質差はなかなか埋めることが難しいものでした。
焼酎および日本酒の製造では、各地方を管轄する国税局がその品質を調査し優良品を表彰する「酒類鑑評会」というイベントを開きます。
清酒では関東信越国税局や大阪国税局の鑑評会がレベルが高いのでしょうが、本格焼酎の分野では何と言っても熊本国税局が国内では(ということは世界で)一番でしょう。
管轄する県が、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県ですので、米・麦・芋焼酎のトップブランドが揃っているところです。
酒類鑑評会に参加する酒は市販品そのものでなくても良いことになっています。
そこで、各社ともこれに応募する酒は特別な製法であったり、原料を吟味したりといったことをするようです。(そうではないという会社もあり、「ウチは市販品そのまま出しています」というところもありました。本当かどうかはわかりませんが)
年に一回、3月に審査があり、確か4月頃に表彰会ならびに公開利き酒会が開かれます。
今年の結果を貼り付けておきます。
酒造会社でこれに出品しないところがあるという話は聞いていませんので、合格していないところは落選したのでしょう。意外なところの名前が無いということがあるかもしれません。
焼酎の製造は、製造量と製造能力のバランスの問題もあり、だいたい売れるとすぐに足りなくなる、逆に売れなければ原酒が余るといったことがよく起きます。
私が担当していた頃は、結構売れ行きは伸びているところだったので、原酒不足に悩まされ、各地の酒造会社から原酒購入(いわゆる「桶買い」)をしていました。
とは言え、簡単に売ってくれるはずもなく何度も頼んでようやく関係を築いてといったことがありました。
その売ってくれた酒造会社というのが、上記の鑑評会の合格常連会社だったりするわけです。
つまり、技術的には向こうがはるかに上だけれど、一応こちらが購入側なので少し立場が強いという、複雑な関係でした。
そういった会社には何度も足を運び製造工程などをチェックさせてもらいましたが、(本当はチェックなどと偉そうなことを言えるはずもなく、ひたすら勉強させてもらう状況でした)会社規模は小さくてもきちんとした製造工程ができるような体制で操業されており、さすがはと感心したものです。
しかし、会社に戻って実際の自分たちの製造はどうかというと、なぜかは分からないままですが「辛い、厚みがない、丸くない」という欠点が目につくものでした。
勤めていた会社の仕事では、微生物の基礎研究というのも確かに面白かったのですが、この焼酎の品質向上という仕事は退職した今でも懐かしく思い出されるものです。
なお、引退後の今では後輩たちが一所懸命作っているとは思っていても、本当に美味しいと思える他社の焼酎を飲むようになってしまいました。ごめん。