爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「望遠ニッポン見聞録」ヤマザキマリ著

ヤマザキマリさんと言えば、テルマエ・ロマエの原作者。

17歳にヨーロッパに渡り、その後長く海外生活をしている方です。

(一番長いのはイタリア、その他アメリカ、シリア、ブラジル等にも住んでいたとか)

 

日本というところには、かなり複雑な心境で対峙してきたようですが、やはり祖国としての感情はお持ちのようです。

 

しかし、遠くはなれたところから眺めればいろいろな面が見えてくるようです。

そういった観点からあれこれの話題を連ねていますが、やはり長く住んでいるイタリアと日本といったところの記述が多いようです。

ただし、それもかなり日本から見るイタリア像、ヨーロッパ像とは異なる見方をされていると感じます。

たとえば、日本の雑誌の表紙を飾るイタリア人タレント。いかにも風なタイプですが、マリさんのイタリア人ご夫君は「イタリアでこんな男見たこと無いよ」とおっしゃるそうです。

 

 

日本人の酒の飲み方という点で特徴的なのは「まずビール」のようです。

マリさんの見る所、ビールは日本のものが世界で一番美味しいのではないかということです。

しかし、ビールへの嗜好ということでは、他のビール愛好国(ドイツ、デンマークアイルランド等)と日本とは大きく異なるようです。

 

ビール愛好国はビールだけ、ワイン愛好国はワインだけを飲むというのがあちらの流儀で、イタリアでは通常はワインしか飲みません。しかもイタリアワイン限定で、ワインならフランスでもスペインでもチリでも構わず飲むという日本人とは大きな差があるようです。

 

 

 

おしん」というテレビドラマは世界各国で放映されており、国によっては非常に大ヒットしているということはよく知られていることでしょう。

しかし、その状況は国によってかなり違い、アジアやイスラム圏の人々は特に強く自らのことのようにそこに引き込まれて見てしまったようですが、西欧諸国ではそれほどの感動は呼ばなかったようです。

 

やはりアジアやイスラム圏の特に女性たちは、「耐える」ということが生活の中で大きな位置を占めており、そこに「おしん」への共感が広がる理由があったようです。

その点、西欧諸国ではそのような心理があまり理解できる状況ではなかったようです。

 

 

海外で暮らす時の心構えとして大切なのは、やはり「郷に入れば郷に従え」で、現地の人と可能な限り同じ暮らしをするということが必要なことですが、さすがのマリさんも絶対に我慢できないのが「美容院」と「歯医者」だそうです。

髪の毛というものに一番気を使っているのは文句なしに日本人だそうで、さらに髪型も客それぞれに似合ったものを工夫してアレンジしてくれる技術は最高だそうです。

 

そんなわけで、美容院はできるだけ海外では行かずに、日本に帰った時に行くようにしていたそうですが、歯医者はそうは行きません。

痛んだ時は仕方なく現地の歯医者にかかったそうですが、日本のような上手で注意深く処置してくれるような歯医者にはイタリアでも中東でもポルトガルでもお目にかかれなかったそうです。

また、アメリカでは眼の飛び出るような見積書を出され、やらずに我慢ということもあったとか。

 

どうも、海外から(しかも日本のことに精通している人が)見た日本というものには、面白いものがあるようです。

 

望遠ニッポン見聞録 (幻冬舎文庫)

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