ビジネスのいろいろな側面でよく考えなければいけないとは言われますが、経営戦略が専門の著者から見ると、「そもそも議論の前提がおかしい」と言うことが多いようです。
前提がおかしい議論はいくら続けていても結論が出ません。
そこで、本書では「よく耳にする問題」を「組織」「人」「戦略」のテーマに分け、それぞれも問題の「前提」と「起点」について普通に考えられているものが妥当なのかどうかを掘り下げているということです。
ビジネスマンが思考の前提を間違えてしまうのは、(まあ人間としての総合力が備わっていないということは置いておいても)言葉が一人歩きしてしまい、分かったような気になるため、そして、生半可な経営学書籍などから得た知識に振り回されてしまうためだそうです。
(この本は違うんでしょう)
「前提」を変えて考えれば、「視点」や「行動」も変わっていきます。できれば正しい前提・起点を見出すべきだということです。
いくつかの例を紹介します。
「仕事はできないくせに、社内政治ばかりに明け暮れてうまく立ち回る人がいる」
これは「仕事ができないくせに」というところがおかしいということです。
実は、いわゆる「仕事」が無能であっても、いや無能だからこそ社内政治というものに打ち込む人も居るということを認識しなければいけません。
正しい「前提」は、組織にはまったく考え方や価値観の異なる人が居るものだということです。それをしっかりと認識し注意して付き合う必要があります。
「トップは現場のことを知らなすぎる。もっと現場に足を運び現場の意見を聞くべきだ」
過去の現場体験だけで経営をしてしまうトップも危ないものです。
しかし、忙しい時間を割いて現場を歩いてもしょせんは「お客様」扱い、本当の意見など聞けるわけもありません。
正しい前提は、「組織のルールでは流れる情報は限られてしまう」ということです。
トップも現場も情報を「全部」知っているわけではないということを認識し、さらにそこから一歩進めてできるだけ情報を流すということが必要です。
「新しいことをしようとすると社内の抵抗にあって潰されてしまうことが多い。うちの会社はお先真っ暗だ」
組織には守るということが必要な場合もあります。
「新しいことを始める」ことが常に正しい結果をもたらすとは限りません。
場合によってはそれで組織が危機に陥ることもよくあることです。
正しい前提は「新しいアイデアには抵抗はなくてはならないもの」です。
抵抗があってもそれを乗り越えるだけの中味と真剣度がないような新しいアイデアはそれだけのものに過ぎません。それをさらに練り直すべきだということです。
なかなか面白いことが書いてありますが、これを実際に活かすのは極めて困難というイメージですがどうでしょう。