歴史の中でいろいろな面を取り上げて並べたシリーズを出版元の世界文化社が企画しているようですが、その中で「日本の権力闘争」についてまとめたのが本書です。
政治権力を巡っての争いというのは古代から現代まで数限りなく行われてきました。
これが人間の変わらない本性なんでしょう。
この本では古代に蘇我氏と物部氏の間で繰り広げられた崇仏論争から、つい最近まで起きていた自民党内の派閥闘争まで、38の政争を解説しています。
そのためか、執筆者も各時代ごとに別れており7名の方が分担しています。
表題に挙げた板垣さんは自民党派閥政争を書いている政治評論家ですし、その他にも静岡大名誉教授の小和田哲男さんも名を連ねています。
ほとんどが学校の日本史でも出てきたものですが、中にはそれ以外のものも含まれています。
古代の項では、藤原良房が伴健岑、橘逸勢を追い落とした承和の変、源高明が藤原北家に排除された安和の変は知りませんでした。
中世では、北条氏が支配権を確立するために比企氏を除いた比企氏の乱、三浦一族が葬られた宝治合戦、安達泰盛一門が滅ぼされた霜月騒動など、鎌倉幕府も騒乱相次いでいたようです。
近世の対決を執筆した国際日本文化研究センター教授の笠谷和比古さんは、大坂の陣までの家康の統治姿勢について面白い見解を示しています。
関ヶ原合戦後に西軍に加わった大名の領地を630万石没収し恩賞として東軍大名に加増したのですが、その分布を見ると京都以西には徳川譜代大名は皆無であったということです。
これは家康が西国の直接支配をあえて抑制していると見るべきです。
その後、家康が征夷大将軍に任官し、一方豊臣秀頼は摂津など3カ国の一大名とされたというのがこれまでの歴史観ですが、実は秀頼は関白任官の準備が進められており、他の事例を見ても家康と秀頼の二重公儀制とも言える体制を目指していたとみられるそうです。
しかし、その後に家康が自らの寿命を認識し、このまま死没すれば息子秀忠についてくる大名がどれほど居るかということを考えて恐怖にかられ、豊臣を滅ぼすことにしたということです。
最後の自民党派閥抗争の話も興味深いものですが、小沢一郎と橋本龍太郎の「一龍戦争」を最後にもはや派閥の力も失われてしまったようです。
派閥抗争に明け暮れるというのも困ったものですが、それすらできなくなった一強独裁の政党がどうなるのでしょうか。
ザ・対決 権力闘争の日本史 (事件と人物 知るほど歴史は面白い)
- 作者: 板垣英憲,笠谷和比古,川口素生,関裕二,小和田哲男
- 出版社/メーカー: 世界文化社
- 発売日: 2012/06/21
- メディア: 単行本
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