爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「偽善エネルギー」武田邦彦著

武田邦彦さんといえば、原発問題や温暖化問題など焦点の話題に思い切った発言を繰り返し、反発も激しく受けているようです。

 

しかし、エネルギー問題に関するこの本を読む限りでは、非常にまともなことを語っているように感じます。

ただし、ここでもやはりその語り口は断言が多く、また反対派を容赦なく切り捨てるという言い方が目立つので、やはり自らそういった批判を招く行動をする人なんでしょう。

また、本書は2009年出版ということで、「福島原発事故以前」のため仕方ないことかもしれませんが、「原発は安全」と断言しています。

ただし、よく読めばそれは「原発は理論的には安全、ただし日本の原発は耐震性に問題あり」ということなのですが、最初のイメージが強すぎてその後は読んでくれない可能性も強そうです。

まあ、トラブルメーカーという性格の強い方なのでしょう。

 

 

まあ、それはともかく、本書の記述についての紹介に絞って書いていきましょう。

 

第1章エネルギーの現状

★石油はいつまで持つか。

ここの認識は極めて正確なものです。

つまり、ここ50年間大油田は発見されていないにも関わらず、消費量がどんどんと伸びていくこと。

そのため、近い将来石油の不足が起こるのは当然であり、値段も高騰する。

しかし、純度の低い低質油などはまだ多く残っておりそれを使う道は残っている。

 

間違いない判断です。

 

原発は安全か

軽水炉は安全である。ただし、日本の現存原発は耐震性をきちんとクリアしていない。

 

最初に「安全である」と言い切ってしまうから反発されるんでしょうね。

 

★太陽は石油の代わりになりうるか

太陽電池が実用に達しない理由は書かれている通りです。

特に、エネルギー効率(EPR等)については、その算出法にトリックとごまかしがあるという点を間違いなく指摘されています。

 

★水力、風力、バイオなど

ほとんど頼りにはできない

 

第2章はエネルギーと食糧・温暖化問題の関係についてです。

食糧生産というものは石油に頼り切っているという構造が作られてしまいました。

それが危うくなっている状況は、極めて危険なものということです。

 

第3章日本のエネルギー問題

石油の供給不足、価格高騰が怖れられているのですが、実は現在の日本ではエネルギー源として石油に頼っている状態ではなくなっています。

一時代前の意識で、発電は石油という認識から石油が足らなくなったら太陽光発電という意識が生まれるのでしょうが、実は発電などはほとんど石油を使っていません。

石油の主要な用途は、ガソリンなどの燃料、プラスチックの原料、冷媒などにつかう化学薬品の原料などです。

それは、いくら太陽光で発電したところで代わりになるはずもありません。

 

ただし、石油が無くなると言ってもそれは現在の良質油の話で、低質油はまだまだありそうです。

そういった低質油をうまく使える体制を作っていくことが今後の安全を守ることになります。

 

原発が安全かどうか、これは安全にできる技術であるとは言えるのですが、現状ではそこがしっかりと考えられていない。

地震もこれまで見られないような大きなものが起きる可能性もあるはずだが、それを突き詰めて考えることなしに、理由のない安全神話を作ってしまった。

これを崩して絶対の安全性などを求めることなく、危機に備える考え方をしなければならない。

(きちんと読めばまともなことを言っているんですが、印象悪い)

 

多くの点で本書内容はそれほどおかしなところは無いように感じました。しかし、言い方次第ですね。

反対派に揚げ足を取りやすいように書かれているかのように思います。

 

偽善エネルギー (幻冬舎新書)

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