武光さんは歴史に関する読み物を多数出版されており、他にも何冊か読んだことがありますが、広く(浅く?)世界の歴史について(基本通りに)記述されており、深みは期待できないにしても多くの知識を得ることはできます。
(なんかあまり褒めていないようですが、個人的な感想です)(多くの人にとっては有益な歴史知識が身につくことでしょう)
出張帰りの車内などで読んで、居眠りを誘うにはちょうと手頃なもので、この本も羽田空港ターミナルビルの書店のカバーがかけられていますから、最初は飛行機の中で読んだものでしょう。
(ここもなにか、けなしているようにも見えますが、そんなことはありません。読んでいるうちに怒りのあまり目が冴える本よりははるかにマシです。)
本書は「世界地図から」と最初にありますが、内容はそこよりも「民族」というものに大きな重みが与えられているもので、日本人のように民族対立というものに意識が低い人々にとっては貴重な知識となりうるものでしょう。
ただし、民族というものについて本当に深く考察したければ、このような本に書かれている事例を頭に入れた上で最近読んだなだいなださんの「民族という名の宗教」を読んだ方がためになるかもしれません。
そんなわけで、この本は一応基礎知識として外せないといった位置づけでしょうか。
中で、ちょっとエアーポケットに入りよく知らなかったことをいくつか。
スリランカ(セイロン)では民族対立から武力衝突が繰り返されてきましたが、BC5世紀ころからインドより移住してきたシンハラ人が王国を作っていました。
しかし、イギリスがインドを征服し統治をすすめるとイギリス人農場主の農園経営が盛んになり、インドから大量にタミル人労働者をつれてきたそうです。
その後、シンハラ人を主として独立したのですが、残されたタミル人勢力との対立が激しくなったとか。
ここにもイギリス植民地政策が影響しているということです。
ローマがキリスト教を国教とした392年より前の301年にキリスト教を国教にしました。
しかし、周囲の国がゾロアスター教、その後はイスラム教となる中で、それらと対抗しながらキリスト教を守ってきたそうです。
しかし、その後アルメニア王国が滅びアルメニア人は各地に離散しました。商才のある人が多かったために、各地で成功者となった人も多いようです。
民族というものは一つのフィクションとして作られるものかもしれませんが、それも続けば現実になります。
現実の世界で続いている民族紛争というものはなんとか解決しなければならないものなのでしょう。
世界地図から歴史を読む方法―民族の興亡が世界史をどう変えたか (KAWADE夢新書)
- 作者: 武光誠
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2001/03
- メディア: 新書
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