爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「パーフェクト図解 地震と火山 地球・大地変動のしくみ」鎌田浩毅監修

地震や火山噴火に関する本はいろいろと読んでいますが、この本は有名な地震学者の京都大学の鎌田さんが監修したもので、全ページにカラフルな写真や図版が描かれているという、非常に綺麗な出来上がりになっているものです。

 

火山の写真など、なかなか目にすることができないものも含まれており、噴火の状況というものも分かりやすくなっています。

また地震や火山を起こす地底のメカニズムも詳細で美しい図版で示されており、見てすぐに頭に入りやすいものといえます。

 

 

とはいえ、そこに描かれているものは日本列島が地震と火山の巣のようなものであるということを強く示しているわけで、とても「絵が綺麗」と喜んでいるわけには行きません。

 

地震と火山噴火が連動しているということは、よく言われていますが、実際に地震により火山地下のマグマ溜まりが刺激されたり周囲の岩盤が傷ついたりして噴火に至るということはあるようです。

 

しかし、そもそも地震がプレートの移動により起きているという原理と、火山というものが地下にマントルが流動化したマグマが溜まって噴出するというものであるということから、ほぼ同じ場所で起きるというのが不可分のことであり、世界的にも火山地帯では地震が多いということになります。

 

 

東日本大震災やそれに続く各地の地震が示すように、日本列島は地震の活動期に入っています。

また火山噴火も相次ぎ、こちらも活動期と言えるでしょう。

内陸型の断層地震はいつどこで起きるか分かりませんが、南海や東南海のプレート境界地震は2040年までには発生すると見られており、震源域の広がりによってはM9台の大きさになるとも考えられていて、緊急の対処が必要となっています。

 

 

火山噴火では何と言っても富士山の噴火が心配されています。

富士山はまだ若い火山であり、活動も激しいもので過去2000年に噴火が43回起きています。

これは約30年に一回は噴火している計算なのですが、しかし最後の噴火の1707年の宝永噴火から約300年は活動していません。

実はこれは「富士山の地下に大量の(0.3立方km)マグマが蓄積されていることを示す」ということなのです。

 

富士山は最近の噴火では山頂の火口からではなく、山腹の側火口から噴火しています。

これは山頂までの火道が長くなりすぎ、そこまで行かないところから噴出するようになっているからです。

山腹からの噴火で溶岩が大量に流れ出せば、方向によっては駿河湾まで達する可能性もありそうです。

そうなると、新幹線や東名高速など交通の大動脈も大きな被害を受け日本列島が東西で分断されるという状況にもなるかもしれません。

 

またガラス質の火山灰による被害も予想され、特に季節によっては東の東京側に大量の火山灰が降ることになります。

これにより健康被害、農業被害だけでなく情報通信への影響も懸念されます。

 

 

地震と火山 (パーフェクト図解)

地震と火山 (パーフェクト図解)

 

 

地震、火山噴火の被害を考えると恐ろしくなりますが、こういったことをきちんと考えようとしないのも日本人の特質でしょうか。

確かにまともに考えようとすると身動きが取れなくなるほどのものですから、考えない方がよほど精神的には楽です。起きてから被害を受けての対応だけにしておけばあまり考えなくて良いでしょう。

しかし、今もし数兆円以上の被害が出るような災害が起きればさらに世界経済を巻き込んでの混乱にもなりそうですが。